【vol.106】土地分割の際には「最低敷地面積」に要注意
東京都で相続を専門とした不動産の調査や土地の有効活用のご提案をしております土地家屋調査士の岡部弘幸と申します。
相続の現場では、土地を分割して相続しているケースをしばしば見ますが、土地を分けて相続する場合の注意点についてご紹介させていただきます。
土地を相続人複数名で分ける場合や分けて遺贈する場合には、土地の分筆登記が必要になります。
そこで、とても大切なことは分割した土地の価値を毀損させないことです。
土地の一番の価値は、建物を建てる敷地として利用することだと言えます。
建物の建築ができない土地は、建築ができる土地と比べて、その価値は下がるのは理解できると思います。
建物を建築するためには、建築基準法や都市計画法の規定を満足する敷地である必要があります。
その規定の中で最も基本的な事は、建築基準法第43条の接道義務です。
<第43条 建築物の敷地は、道路に二メートル以上接しなければならない。>
建築基準法抜粋
よって、道路に面しない土地や道路に面していてもその幅が2mない土地を分筆によって作ってしまうと建物を建築することができない土地となってしまいます。
分筆後の111番2の土地は、道路に接していないため単独では建物が建てられない土地となってしまいます。これでは、111番2の土地を相続しても財産価値を大きく毀損してしまうことになります。
これは極端な例ですが、相続の実務ではこの接道義務以外でよくある失敗事例があります。それが「最低敷地面積」によるものです。
<第53条の2 建築物の敷地面積は、用途地域に関する都市計画において建築物の敷地面積の最低限度が定められたときは、当該最低限度以上でなければならない。>建築基準法抜粋
この最低敷地面積は、その地域の都市計画に基づき決定されています。
例えば、最低敷地面積が100㎡の地域と仮定すると、200㎡の土地を120㎡と80㎡に分筆した場合には、80㎡の土地には建築ができなくなってしまいます。
このように、土地を分割する場合には最低敷地面積を把握したうえで分割しないと、土地の価値が下がる場合があるため注意が必要です。
それでは、最低敷地面積が100㎡の地域で次のように分割すれば大丈夫でしょうか?
例えば、接道している道路が建築基準法第42条第2項のみなし道路だったとしましょう。実は、ここに大きな落とし穴が潜んでいます。
建築基準法第42条第2項のみなし道路とは、建築基準法が制定された当時から存在した幅員4m以下の道路のことで、新たに建物を建築する際には道路幅が4mになるように敷地を後退する必要があります。そして、その後退した部分は道路の敷地とみなされ、建築物の敷地とすることはできません。
ここで注意しなければいけないのが、所有権としての地積と建築敷地は一致しない場合があるということです。この場合、登記上の地積は、100㎡ですが、建築敷地はセットバック部分を除いた地積となり100㎡未満になってしまいます。
最低敷地面積とは、「建築敷地」の最低限度を規定しており、この場合、100㎡に満たないこととなり建築はできません。
そして、相続のときに時空を超えて起こる悲劇がこちらです。
このようなことのないよう、土地を分けるときには不動産に詳しい専門家に相談しましょう。
【笑顔相続の事例】
遺言を書きたいというお客様から、土地を娘さん2人に等分に遺贈したいとのご要望を伺い調査したところ、半分ずつだと最低敷地面積に抵触することが判明しました。一方の敷地に既存宅地の特例を適用し、セットバック地積も考慮したうえで地積を調整し分筆したことによって、将来、双方の土地に建物の建築が出来る土地として承継することができました。
【相続診断士の方へのアドバイス】
相続財産の中で過半を占めると言われている不動産をどのように承継するか、は非常に大事です。税務面も大事ですが、どのように有効利用できるか、価値を最大化できるかというところは不動産の専門家にもご相談ください。