【vol.99】相続Q&A~親が死んだら実家にタダでは住めなくなるの?~

質問
父が亡くなりました。相続人は長女である私と弟の2人です。
弟は近県に所帯を構えていますが、私はずっと実家暮らしの独身で、母が亡くなってからは父のために家事や介護を担ってきました。
そろそろ遺産分割をしなければと思うのですが、最近、弟から「実家に住み続けるなら家賃をもらいたい」と言われて不安になりました。親が死んだら実家にタダ(無償)では住めなくなるのでしょうか?
回答
被相続人が亡くなる前からその所有不動産に無償で住んでいた場合、原則として、遺産分割協議が成立するまではそのまま無償で住み続けることができます(最高裁平成8年12月17日判決参照)。
逆に、以下のような事情がある場合には、他の相続人に家賃相当額を支払わなければならない可能性が出てきますので、注意しましょう。
① 所有者である親が亡くなった後、空き家になった実家に引っ越して住み始めた。
② 遺産分割協議が成立して、実家を他の相続人が取得することになったにもかかわらず、住み続けた。
③ 遺言書によって、実家を他の相続人が相続したにもかかわらず、住み続けた。
④ 所有者である親との間で「親が生きているうちは、その介護をすることを条件として、無償で実家に住んでもよい」という覚書を交わしていた
教訓
実家暮らしというのは、他の兄弟姉妹から見ると「うらやましい」と映ることも多いものです。
実家暮らしの子どもがいる場合には、所有者である親が亡くなった後にその子どもの住居をどうするのか、生前にきちんと考えて親の思いを形に残しておきましょう。