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【vol.94】相続Q&A~遺留分侵害額の請求と小規模宅地等の特例について~

質問

被相続人甲(令和元年8月1日相続開始)の相続人は、長男乙と長女丙の2名です。乙は甲の遺産のうちA宅地及びB宅地を遺贈により取得し、相続税の申告にあたってB宅地について小規模宅地等の特例を適用して期限内に申告しました(特例の適用要件はすべて満たしています。)。
その後、丙から乙に対し遺留分侵害額の請求がなされ、乙は丙に対し遺留分侵害額に相当する金銭を支払うこととなりましたが、乙はこれに代えてB宅地の所有権を丙に移転させました(移転は相続税の申告期限後に行われました。)。
丙は修正申告の際にB宅地について小規模宅地等の特例の適用を受けることができますか。

回答

民法の改正により、令和元年7月1日以後に開始した相続から適用される民法第1046条《遺留分侵害額の請求》に規定する遺留分侵害額の請求においては、改正前の遺留分減殺請求権の行使によって当然に物権的効力が生じるとされていた(遺贈又は過去の贈与が無効となり、遺贈又は贈与をされていた財産に関する権利が請求者に移転することとされていた)規定が見直され、遺留分に関する権利の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権が生じることとされました。
今回のケースの場合、遺留分侵害額の請求を受けて乙はB宅地の所有権を丙に移転していますが、これは、乙が遺留分侵害額に相当する金銭を支払うために丙に対し遺贈により取得したB宅地を譲渡(代物弁済)したものと考えられ、丙はB宅地を相続又は遺贈により取得したわけではありませんので、小規模宅地等の特例の適用を受けることはできません。なお、丙は、遺留分侵害額に相当する金銭を取得したものとして、相続税の修正申告をすることになります。
なお、乙がB宅地を遺贈により取得した事実に異動は生じず、また、乙がB宅地を保有しなくなったのは相続税の申告期限後であることから、遺留分侵害額の請求を受けてB宅地の所有権を丙に移転させたとしても、乙はB宅地についての小規模宅地等の特例の適用を受けることができなくなるということはありません。なお、乙は、遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額(代償金債務)が確定したことにより、これが生じたことを知った日の翌日から4月以内に、更正の請求をすることができます。

教訓

本事例は、国税庁の質疑応答事例に基づくものです。遺留分請求の仕組みが変わったことにより、税制にも影響のある例として、ぜひ押さえておきましょう。


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