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【vol.91】相続Q&A~“相続放棄”が3か月過ぎても受理される場合とは?~

質問

会った覚えもない高齢の叔母が亡くなり、私と兄が相続人であることを知りました。
兄と相談して2人とも相続放棄をすることに決め、きっと兄が私の分まで手続をしてくれたと思って安心していました。
ところが、それから1年ほど経った最近になって、「兄は相続放棄を済ませているが、私は相続放棄をしていないことになっている」とわかりました。
相続放棄には「自己のために相続の開始があったときから3か月以内」(民法915条第1項)という期限があるそうなので、今さら裁判所に相続放棄を申し立てても無駄なのでしょうか。

回答

原則として3か月の熟慮期間を過ぎてからの相続放棄は認められませんが、例外的に、本件と似たケースで相続放棄の申述が裁判所に受理された裁判例があるので、本件でも(絶対とはいえませんが)相続放棄の申述が受理される可能性があるかもしれません。
その裁判例(東京高等裁判所令和元年11月25日決定)では、簡単にいうと次のような点が考慮されました。
・相続放棄の当事者2名がいずれも高齢(70代前半と80代半ば)である。
・他の兄弟が代わりに相続放棄の手続をしたと信じていた。
被相続人とは数十年間会ったことがなく、その財産についての情報が不足していた。
その結果、熟慮期間の起算点につき特別に「相続放棄手続や遺産に関する具体的な説明を受けた時から」と解釈され、相続放棄をすることが認められたのです。
相続放棄の熟慮期間の起算点をどう考えるかについては、「(熟慮期間内に相続放棄をしなかったことが)相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信じるについて相当な理由がある場合(には起算点を後ろにずらすことができる)」という有名な裁判例(最高裁昭和59年4月27日)があり、上記で紹介した裁判例はその応用編といえるでしょう。

教訓

法律は四角四面に見えても、実務的な当てはめの場面では柔軟な解決をしてもらえることもあるものです。困った事態になっても、最初からダメと決めつけず、「すべての扉を叩いてみる」という気持ちで一緒にトライしてくれる専門家を探してみるとよいでしょう。


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