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【vol.89】相続Q&A~“親の預金の使い込み”の考え方とは?~

質問

高齢の母親が兄一家と同居しています。
預金通帳やカードは兄が管理しており、そこから母親の医療費や生活費を出しているそうです。
最近、兄が新車を買ったり、息子が海外留学したりしていると聞き、もしや母親のお金を使い込んでいるのではないかと怪しんでいます。
もしそうだったら、これは相続の際にどのように扱われるのでしょうか。
また、今からできる対抗策はないでしょうか。

回答

① 相続の際の取り扱い
この場合には、母親に「無断」だったのか「承諾を得ていた(贈与)」のかによって異なります。
A) 母親に無断で預金を使い込んだ場合
この場合には母親の兄に対する不当利得返還請求権または損害賠償請求権という「債権」が相続財産に計上されることになります。
兄が「母の医療費に全額使った」などと弁解して否定した場合には、「遺産の範囲」に争いがあることになるため、地方裁判所でその債権の存否を争うことになります。
B) 母親から預金の贈与を受けた場合
金額の多寡にもよりますが、特別受益として遺産に持ち戻すことになるでしょう。ただし、遺言書がある場合の遺留分算定に当たっては、原則として相続開始前10年以内の生前贈与(特別受益)しか遺産に計上されません(改正民法第1044条第3項)。
※ 上記A)B)は母親の生前の使い込みの場合ですが、仮に母親の死亡後から遺産分割前までの間に兄に出金されてしまった場合には、兄以外の相続人の同意によって遺産分割時にその出金を遺産とみなすことができます(改正民法第906条の2)。
※ 使い込みの事実を調査するには、個々の相続人が単独でその金融機関に過去分(兄が預金管理を始めた以降分。ただし最長10年間)の取引履歴を求めれば可能です。母親生存中に調査するには母親名義で取引履歴を求めることになります。

② 今から(母親の生存中に)できる対抗策
A) 家族で話し合って母親の預金管理のルール(報告義務など)を取り決める。
B) 母親の判断能力がある場合は、委任契約や家族信託契約を利用する(兄以外の者を受任者や受託者とする。)。
C) 母親の判断能力がない場合は、成年後見制度(専門家後見人)を利用する。

教訓

親の財産を子供の1人が管理する場合には、皆でルールを決めたり、管理をする人が他の兄弟姉妹に後々お金の流れを説明できるように証票類をしっかり保管しておくようにしましょう。
「親しき仲にも帳簿あり」です。


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