【vol.57】相続Q&A~不動産を確実に承継させたい~
質問
私は再婚しており、後妻との間に子どもがいます。
前妻との間にも子どもがいるのですが、後妻との間の子どもと一緒にローンを組んで賃貸併用住宅を建てました。
この不動産を後妻との間の子どもに確実に承継させたいと考えています。
万が一、私よりも先に子どもが亡くなってしまった場合には孫に承継させたいです。
何か良い方法はありますか。
回答
不動産を確実に承継させたい場合、遺留分の問題はありますが、いくつか方法が考えられます。
- 生前贈与を行い、不動産の名義を子どもに変えておく
- 遺言を書く
- 死因贈与契約を締結し、仮登記を行う
- 家族(民事)信託契約を締結し、その旨の登記を行う
本件は、確実に承継させたい財産が不動産のため、上記の方法のうち、遺言以外の方法を採ると登記による公示を行うことが可能です。
相続開始時に他の相続人の遺留分を侵害している場合には不動産を100%承継できないことはありえますが、遺留分に配慮できればその可能性は極力0にすることができるでしょう。
教訓
1から4の方法は、それぞれメリット、デメリットがあります。簡単にまとめてみました。
生前贈与は、生前に不動産を渡したい子どもに名義が変わりますが、特別受益となり遺留分減殺請求の対象となりえます。
また、贈与税や不動産取得税、不動産の名義変更のコストがかかります。
遺言は、相続発生時に子ども名義に変わるため、相続税の範囲となり生前贈与よりも税金が抑えられます。
一方で、遺言者による撤回が可能であるため、子ども側からみると不安が残ります。
死因贈与契約の締結は、死因贈与を原因とする仮登記をすることができます。
加えて、相続が開始原因のため、相続税の範囲となり生前贈与よりも税金が抑えられます。
一方で、贈与者による撤回が可能であること、贈与者よりも先に子どもが亡くなったときに、孫に死因贈与する旨の仮登記も可能ですが、2つ仮登記をしなければならないことが負担となります。
委託者及び受益者を親、受託者を後妻との間の子どもや後妻とする信託契約を締結し、委託者兼受益者の死亡を信託終了事由とする登記を行うことで、相続税の範囲内で処理することができ、信託契約として一方的な撤回もできないようにすることができます。
一方で、信託契約書の作成やその登記に際してコストがかかります。
いずれの方法を採るかは、当事者の想いを確認し、それぞれの手続きの良いところ、悪いところを理解してもらった上で、決めることになると思います。
また、本件はローンもあるため、不動産の登記を行う場合には事前にローン会社に相続対策の理由や方法を相談されることをお勧めします(債権者の承諾なしに不動産の権利を移転、処分することを禁じている契約が多いからです)。