【vol.45】相続Q&A~相続手続の書類が郵送されてきました?!~

質問
長年疎遠だった親戚から、郵便物が届きました。そこには、「あなたは被相続人Aの相続人であるため、下記の書類をお読みの上、ご協力をお願いします。」という趣旨の下記の手紙が同封されていました。
記
あなたはAの相続人であることが判明しました。「相続分譲渡証明書」「脱退申出書」にご署名、ご実印の上、印鑑証明書2通と一緒に返信下さい。
※「相続関係図(家系図)」付き。
Aに配偶者はいるが子供はいない。法定相続人は12名。
以上
今後、どのような対応をすればよいですか。
回答
おそらく、相談者は現状が全く把握できていないことだと思います。
送られてきた書類は、「相続分譲渡証明書」といって相続人としての相続分を他の相続人等に譲渡します、という書類で、この書類に署名捺印することで遺産分割の当事者から外れてしまいます。
一種の相続権の放棄の書類となります。
従いまして、まずは、財産目録を請求し、きちんと状況を確認した上で、どのようにするか判断すべきです。
一方で、最初からこの相続手続に一切関わるつもりがない、という意向であれば相続放棄の手続を家庭裁判所に申し立てることも考えられます。
「相続分の譲渡」と「相続の放棄」の違いは、亡くなったAに多額の負債があった場合でも「相続の放棄」を行っていれば、はじめから相続人ではなかったものとみなされるため、借金を負うことはないということです。
教訓
悲しい話ですが、今回のケースのように、疎遠となった親戚からいきなり相続手続の書類が郵送されてくる、ということは少なくありません。
その郵送物の多くが財産目録もきちんとない状況で、暗に相続放棄を促す類のものです。
これでは、相続権を主張する気のない方でも、この進め方に疑問をもって気持ちよく手続きに協力することが難しくなってしまいます。
疎遠だからこそ、礼を尽くして、手続きについて説明する必要があります。手間を惜しんで簡単に済ませようとすると、かえって時間もお金もかかりますし、何より笑顔相続が遠のいてしまうことは、親子の相続でも、遠い親戚の相続でも変わりはありません。