【vol.36】相続Q&A~限定承認で、この遺産はもらえて、あの遺産は放棄できる?~
質問
相続財産の中に、売れない不動産もしくは売っても二束三文にしかならない不動産があります。この不動産は放棄して、他の遺産は取得できる方法があると聞きましたが、いかがでしょうか。確か、限定承認と呼ばれていた気がします。
回答
限定承認=欲しい遺産のみ限定して承認(相続)する、という理解は誤りです。したがって、ご質問のような都合のよい制度はありません。
限定承認とは、相続人が一応相続を承認し、相続によって得た積極財産の限度においてのみ、被相続人の債務及び遺贈を弁済すべき旨の留保を付してする相続のことです。
もし、清算の結果残余財産があれば相続人に帰属するという承継方法です。相続財産が多額の借金があり債務超過であることが明らかであれば、相続放棄をすればよく、債務がどの程度あるのか不明であり、積極財産が残る可能性がある場合に利用される制度です。
そのほか、被相続人の一身専属権を除く一切の権利義務を相続開始の時から無限に承継したことになる単純承認とはじめから相続人でなかったものとみなされる相続放棄があるだけです。
教訓
相続における遺産の承継パターンとしては、大きく分けて3つあります。
単純承認と相続放棄という100か0かという方法と、限定承認という相続人の責任を相続財産の限度に縮減した上で残余財産があればその財産を承継する方法があります。
「預貯金は相続するけど、不動産は放棄するよ。」という選択はできませんので、こういう問題が将来発生することが予見できる場合には、事前に相続対策をする必要があります。
相続が発生してしまってからでは、手遅れとなる可能性がありますので、承継したくない財産があるかどうかも、チェックポイントの一つとなります。