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【vol.30】相続Q&A~相続税の優遇措置と遺産分割~

質問

遺産分割で相続人同士が揉めてしまい、相続税の申告期限までに遺産分割が整いそうにありません。この場合に、遺産分割が行われていない財産については、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などの相続税の優遇措置が受けられないと聞きました。どうしたらよいでしょうか?

 

 

回答

小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減は、財産の取得者の状況に応じて、相続税を優遇する制度ですので、相続税の申告期限までに取得者が確定しない財産については、適用を受けることができません。しかしながら、このような場合においても、適用の可能性がまったくなくなったわけではありません。これについては、実際に条文で以下のように規定されています。

 

小規模宅地等の特例の場合
<租税特別措置法第69条の4第4項(抜粋)>
 ただし、その分割されていない特例対象宅地等が申告期限から三年以内(当該期間が経過するまでの間に当該特例対象宅地等が分割されなかったことにつき、当該相続又は遺贈に関し訴えの提起がされたことその他の政令で定めるやむを得ない事情がある場合において、政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該特例対象宅地等の分割ができることとなった日として政令で定める日の翌日から四月以内)に分割された場合には、その分割された当該特例対象宅地等については、この限りでない。

 

すなわち、相続税の申告期限から3年以内に取得者が確定すれば、小規模宅地等の特例の適用を受けられるのです。これは、配偶者の税額軽減についても同様です。
この場合の手続きとしては、まず当初の申告時において、遺産分割の行われていない財産について、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して提出する必要があります。そして、申告期限から3年以内でも遺産分割が行えない場合には、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」をその申告期限から3年を経過する日の翌日から2ヶ月以内に相続税の申告書を提出した税務署長に対して提出する必要もあります。この承認申請書の提出が期間内になかった場合には、これらの優遇措置を受けることはできませんのでご注意ください。
さらに、申告期限後に優遇措置が受けられた場合には、遺産分割が行われた日の翌日から4ヶ月以内に「更正の請求」を行い、当初の申告時において納め過ぎた分の税金を取り戻すことで差額を調整することになります。したがって、当初の申告時においては、優遇措置を受けないで計算した相続税をいったん支払うか、支払えない場合には延滞となり、延滞税を支払うことになるのです。

 

 

 

教訓

 相続税額の計算において、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減の適用の有無は、実際の納税額に大きく影響してきます。生前における相続税額の試算においても、当然考慮していることでしょう。しかし、これらの優遇措置は、相続税の申告期限までに遺産分割が整って初めて適用を受けられるものだということを忘れてはいけません。言い換えれば、相続で遺産分割が円滑に進むよう、あらかじめ遺言等で分割案を示しておくことは、同時に相続税の対策にもつながるのです。

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