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【vol.3】相続Q&A~遺産分割と相続税~

被相続人には,長男Aと二男Bがいます。被相続人の財産は,3億円のビル,2億円の預金,5億円の借金です。
(1)法定相続分に従い,AB各2分の1の割合で資産も負債も相続した場合,相続税は課税されますか。
(2)遺産分割協議によって,Aが3億円のビル,5億円の借金を,Bが2億円の預金を相続した場合,相続税は課税されますか。

回答

(1)相続税は課税されません。 3億円(ビル)+2億円(預金)-5億円(借金)=0円(課税価格)
結局は,積極財産(ビル,預金)と消極財産(借金)の価値が同等で,正味の純財産はゼロとなるため,相続税は課税されません。
(2)相続税は課税されません。 or 相続税は課税されます。 正解はどちらでしょうか。

<解説>
(2)について,相続税は課税されません。 なぜなら,(1)と同様に課税価格は0円なのだから,相続人間で遺産をどう分けようが,影響はありません。
具体的な計算としては,Aは,2億円(ビル)から5億円(借金)を差し引くと,取得した正味の純財産がマイナス2億円となるため,相続税は課税されない。

一方,Bは,2億円(預金)からAのマイナス2億円を引いて0円となるため,やはり相続税は課税されない, と答えてしまうと,大変なことになります!!!

<正解> Bには2,500万円の相続税が課税される。

相続税は,基本的に,被相続人の相続財産の合計額より納付すべき相続税の総額を計算して,この総額を取得した財産の価額で各人の納付税額を求めることになっています。しかし,厳密な計算過程においては,各人ごとに取得した財産の価額を積み上げることで,被相続人の相続財産の合計額を計算しています。
この過程において,財産を取得した者のうちに,取得した正味の純財産がマイナスになる者(本事例におけるA)がいた場合には,これをゼロとカウントするため,マイナス分が他の者(本事例におけるB)が取得した財産と通算されることはありません。したがって,Bが取得した正味の純財産は2億円となり,弟が納付すべき相続税額の計算は次の通りになります。 2億円-(5,000万円+1,000万円×2人)=1億3,000万円 (1億3,000万円÷2×30%-700万円)×2=2,500万円

教訓

法定相続分による遺産の分配時には相続税が課税されない場合でも,遺産分割協議による遺産の分配方法によっては,相続税が課税されることがある。

本事例(2)のような遺産分割協議が現実に行われることは,稀なケースだと思います。
Bは,容易に2億円を取得できるのに対して,Aは5億円の借金を抱え,たとえAが相続するビルの賃料収入が多く見込めるとしても,その返済が終わり,Aの手元に単純に2億円が入いるのには長い年月が必要であり,その間のリスクもAは背負うことになるためです。
しかし,本事例(2)は実際にあったケースです。 また,不動産を相続する者が,そのローンも一緒に負担する,という遺産分割はよくありますので,似たようなケースについて相談されることがあるはずです。
相続税は,相続人が一番気にする問題と言っても過言ではありません。 具体的な相続税の相談を受けた場合には税理士に相談する,というスタンスを忘れないようにしましょう。

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