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【vol.19】相続Q&A~生前に遺留分の放棄はできますか~

質問

家族構成:父、長男、二男、三男

父は、3人の息子のうち、長男に事業を継いでもらうので、長男に必要な土地と建物や自社株を相続させたいと考えています。
残り2人には、死亡保険金の受取人にしてあるので遺留分の請求を起こせないようにしておきたいと相談を受けました。
相続発生前(生前)に遺留分の請求を放棄させる方法はありますか。

 

 

回答

・相続発生前において、遺留分の放棄は可能です。ただし、家庭裁判所の許可を受ける必要があります。

民法1043条に、相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる、とあります。通常、遺留分減殺請求権を行使するかは、遺留分権利者の自由であり、その放棄も自由に行えるはずですが、被相続人等の圧迫により遺留分権利者が遺留分減殺請求権をあらかじめ放棄するよう強要される可能性があるため、家庭裁判所の許可を要件としています。
それゆえ、家庭裁判所は遺留分放棄の許可審判にあたっては、単に遺留分の放棄の意思の真正を確認するだけではなく、当事者間の具体的な事情を考慮して、放棄の理由が客観的に合理的かどうかを判断することになります。

本問の場合、二男と三男は、父の住所地を管轄する家庭裁判所へ、遺留分放棄の許可申請を行いますが、父の遺産総額と二男、三男が受取人となっている保険金とのバランス、その他もろもろの事情を考慮して、家庭裁判所が判断することになります。なお、遺留分の放棄の許可審判がされた後に申立ての前提となった事情が変化し、遺留分放棄の状態を維持することが客観的にみて不合理となった場合には、家庭裁判所は遺留分権利者の申立てを受けて、放棄許可審判を取り消し、若しくは、変更することができる、という判例がありますので、こちらも併せて覚えておくと良いでしょう。

教訓

生前に遺留分の放棄をあらかじめ行うことは、家庭裁判所の許可を受ければ、可能です。私が携わった案件では、父の相続(一次相続)の際に、たくさん遺産を相続した長男が、母の相続(二次相続)開始前に、母の相続の遺留分を家庭裁判所の許可を受けて放棄した事例があります。その後、母は、「長女に全財産を相続させる。」という遺言を書いて、長男は母の相続には一切関与しない状態を合法的に作り出しました。遺留分の放棄は、相続人間であらかじめ話し合いができているケースでは、非常に有用な相続対策となります。

注意して欲しい点としては、相続人が遺留分の放棄をしても、被相続人が遺言書を残していないと遺留分の放棄は意味がないということです。遺留分を放棄しているだけで、相続権までも放棄しているわけではないからです。
一方、相続の放棄は、生前にはすることができません。相続開始後、一定期間内に、家庭裁判所に相続放棄の申述をすることにより可能となります。生前に、「わしは一円もいらんよ。」と言っている相続人がいても、遺言書がない限り、遺産分割協議書に押印して頂く必要があります。

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