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【vol.14】相続Q&A~身勝手な養父?かわいそうな養女?~

養女(43歳)からのご相談です。

養父(83歳)が亡くなりました。
養父は祖父が立ち上げた会社の2代目として、会社の発展に貢献しました。数年前に前妻との子(実子)に社長を交代し、その後は会長として会社の経営に携わってきました。養父と後妻との間に実子がいなかったことから、後妻の親戚にあたる私(相談者)が8歳の時に養子縁組をしたのですが、当時のことはほとんど覚えていません。

養父の相続税については、会社の顧問税理士であり、実子とも長らく付き合いのある税理士が計算しました。
養父は生前に養女の私と実子に宛てて公正証書遺言を書いており、その遺言には、私に自宅と会社の株式の30%を、実子に祖父から引き継いだ本家の土地と会社の株式の残りとその他の財産を、そして預貯金は二人で半分ずつ相続させる旨が記載されていました。
元々、私と実子は疎遠だったということもあり、遺産分割は、実子と会うことはせず、遺言の内容に基づき、遺言執行人である税理士が行いました。

二週間後、税理士より相続税の納税額の連絡を受けました。相続税の申告書には、私の取得した財産の評価額として、自宅4,000万円、会社の株式6,000万円、預貯金2,500万円、相続税の納税額は約2,000万円と記載されていました。

この結果、養父から相続した預貯金は約2,500万円ありましたが、相続税を納めたら、500万円しか残りません。

税理士が息子と昵懇(じっこん)であったこともあり、自宅の評価はともかく、会社の株式の評価には今一つ信用ができません。知らないところで、実子にだけ有利になるように計算しているのかも…。

しかも、株式の配当は、ここ数年は10パーセントだったのが、直近でいきなり5パーセントに下がっている状況です。
それなのにこのような評価額では、どうしても納得がいきません。


このような相談を受けたら、相続診断士の皆様ならどう対応するでしょうか?

解説

「養父の身勝手から、多額の相続税を納めることになって、かわいそうな養女だ。」
こう思われて養女に同情し、弁護士を立てて実子と話し合うことをアドバイス、ということはないでしょうか?

ここで注意しなくてはいけないのは、本事例が養女目線によってのみ語られていることです。養女目線であるということは、当然のことながら、養女にとって都合よく脚色されているかもしれません。
ここで相続診断士が養女の言い分だけを鵜呑みにして行動してしまうと、もめなくていいことが、かえってもめてしまうという事態にもなりかねません。

実際に、相続診断士が養女をサポートし、これまでの経緯を実子と税理士にヒアリングしたところ、以下のことが判明しました。
・元々、今の倍以上あった会社の株式の評価額を、数年かけて株価対策を行うことで、半分近くにまで引き下げた(直近の配当が下がったのは、会社の株価対策の影響によるもの)。
・生前に公正証書遺言を書き、疎遠だった実子と養女との無用な争いを回避しようとした。

教訓

ヒアリングの結果、養父は身勝手どころか、生前にしっかりと相続対策を講じていたことがわかります。問題点は、生前に養女と相続についての認識を共有する機会がなかったことでしょう。
相続診断士のミッションは、争族を笑顔相続に変えていくことです。
あらゆる事態において、冷静かつ中立な立場で状況を把握し、適切な対応をすることが、相続診断士の役割であり、それが笑顔相続へつながっていくのです。

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