【vol.138】相続Q&A~相続時精算課税適用者が暦年課税及び相続時精算課税に係る贈与を受けていた場合の相続税の課税価格に加算される金額~
質問
Bは、父であるAからの贈与により次のとおり財産を取得していたところ、令和 14 年 3 月 15 日にAが死亡した。
この場合において、これらの財産につきAの死亡に係る相続税の課税価格に加算される金額はいくらか。
なお、Bは、Aから相続又は遺贈により財産を取得していない。
回答
相続税の課税価格に加算される金額は、500 万円となります。
( ②200 万円 + ③250 万円 - 100 万円 )+ ④150 万円 = 500 万円
※②及び③の財産は、相続の開始前3年以内に取得した財産以外の財産に該当することから、これらの財産の価額の合計額から 100 万円控除をした残額が加算されます。
相続又は遺贈により財産を取得した者は、被相続人から加算対象贈与財産を取得している場合には、
その加算対象贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算することとされています(相法 19①)。
そして、特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得しなかった相続時精算課税適用者が特定贈与者からの贈与により取得した財産については、
当該特定贈与者の死亡に係る相続税の計算上、相続又は遺贈により取得したものとみなされることから、
上記の「相続又は遺贈により財産を取得した者」には、当該相続時精算課税適用者も含まれることとなります(相法 21 の 16①)。
また、令和6年1月1日以後に特定贈与者からの贈与により取得した相続時精算課税の適用を受ける財産については、
当該財産の価額から相続時精算課税に係る基礎控除の額を控除した残額が当該特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算又は算入されることとなります(相法 21 の 15①、21 の 16③、改正法附則 19①)。
相続時精算課税適用者が被相続人から相続または遺贈で財産を受け取らなかった場合、
特定贈与者(被相続人)から贈与により取得した財産(⑤の財産)の価額が、相続時精算課税に係る基礎控除額(年110万円)を超えなければ、相続税の課税価格に加算される金額はありません。
ただし、加算対象期間のうち、相続時精算課税の適用を受ける年より前に、特定贈与者から暦年課税による贈与で取得した財産(②から④の財産)がある場合、
その財産の価額は相続税の課税価格に加算されますので、相続時精算課税の適用の判断にあたっては、ご注意ください。
国税庁「質疑応答事例 R6新着分」より
教訓
令和6年度の税制改正により、従前よりも使い勝手が良くなったと言われる相続時精算課税制度ですが、適用にあたっては税理士に相談するなどして、正しい理解をもって利用するようにしましょう。