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【vol.103】相続Q&A~記載された日付と押印日の違う遺言書は有効か?~

質問

かねてから必要だと思っていた自筆証書遺言を元日に書いてみました。
何時間もかけてこまごまと書き上げ、翌日に子供3人を呼び集めてその遺言書を見せました。
すると、長男から「ハンコを押してないじゃないか」と指摘されたので、あわててその場で押印しました。
ところが、次男から日付は昨日になっているけど、ハンコを押して遺言書が完成したのは今日だ。この遺言書には間違った日付が書かれていることになるから、無効になるのでは?と言われてしまいました。
このような遺言書は無効なのでしょうか?

回答

おおむね有効

裁判例の中には「全文を書いた日の27日後に押印した遺言書」を「有効」としたものがあります(最高裁令和3年1月18日判決)。
いうまでもなく遺言書については民法で厳格な方式が定められていますが、それはあくまで「遺言者の真意」を確保するためのもの。あまりに方式を重視しすぎると、それによってかえって「遺言者の真意」を実現できなくなってしまうため、適切ではないという考え方が根底にあるようです。
また、古い裁判例にさかのぼると、「全文を書いた翌日に、前日の日付を書き入れた遺言書」を「有効」としたもの(大審院昭和6年7月10日判決)や、「全文を書いた8日後にその日(8日後)の日付を書き入れた遺言書」を「有効」としたもの(最高裁昭和52年4月19日判決)があります。
これらの裁判例の流れからすると、質問にある遺言書も有効とされる可能性が高いでしょう。

教訓

「裁判になれば、おおむね有効と判断されるだろう」といえることも大事ですが、それよりも「相続人の間で疑いや争いが生じること自体を避けたい」と誰しも思うことでしょう。
そのためにも、遺言書を書く時には、このような疑義が生じにくい公正証書遺言を作成することをお勧めします。

 


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