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【vol.98】想いをきちんと伝え、「笑顔相続」となる遺言書にするために

相続診断士の皆様、はじめまして。
泉佑(みゆ)税務グループの代表税理士をしております伊佐明浩(いさあきひろ)と申します。

当事務所は、相続対策や実際の相続税の申告などの資産税を業務の中心としております。
相続の現場では、お客様とのコミュニケーションを最も大事に、お客様ご自身も気づけていない『想い』や『課題』にも気を配り、お客様の立場になって寄り添うことができるファミリーカウンセラーでありたいという信念のもと、日々お客様のサポートをさせて頂いております。

さて、私は、ご生前の相続対策についてもご相談を多く受けております。
お客様の中には、相続税にとてもご関心を持たれ、節税を気にされるお客様もいらっしゃいます。
ただ、節税だけではなく、「想い」も大事でございます。
そこで、ご本人のお気持ちに寄り添い、残された方々へのお気持ちを第一に「笑顔相続」になるような相続対策のご提案をさせて頂いております。

今回のコラムでは、誰にも相談せず、ご生前に被相続人がご自身で考えられて行われた対策が残念ながら「笑顔相続」に繋がらないケースとなってしまった事例を紹介させていただきます。

この事例の相続人となるお客様とは、ご相続があった後の相続税申告のご依頼を受け初めてお会いしました。被相続人の方は、生前に「公平に」という言葉をよくおっしゃっていたようで、相続人である長男と長女が自分の遺産相続で揉めないようにと懸念され、ご自身で遺言を作成されておりました。

作成された遺言は自筆証書遺言で作成されており、封印も適切にされていたため、相続人の方々も遺言書の通りに分割するということでお決めになっていました。「笑顔相続」に向け遺産分割での争いもなさそうな状況でした。
その後、実際に裁判所にて検認してみたところ、状況は一変しました。
日付や署名など、一見すると問題なさそうではあったのですが、財産の大半を占めていた自宅兼賃貸マンションの引き継ぎについて、記載されている内容に問題がありました。

自宅兼賃貸マンションに関する要旨は下記のようになっておりました。
① 不動産を長男と長女に対して6対4で引き継ぐ
② 10階建てのマンションのうち1階から5階を長男に引き継ぐ
③ 10階建てのマンションのうち6階から10階を長女に引き継ぐ
※ 一部、記載内容を変更しております。

この記載の内容において、何が問題かと言いますと、①の「不動産」というものが土地建物全体に対してなのか、土地だけもしくは建物だけを指しているのか、また、②③についても、この建物は区分登記されておりませんでしたので、登記上では各階ごとに分かれていない建物をどのように引き継ぐことにするのかという点で問題がでてきました。
そして、何よりも①と②③の内容に、矛盾が生じてしまっている点に最大の問題がございました。

この遺言書では相続税申告や登記の名義の書き換えができないため、改めて遺産分割協議書を作成することとなりました。

長男にとってみれば①の解釈を基に土地建物全体を6対4でという主張となりました。
一方、長女は「公平に」と生前被相続人が言っていたことから、被相続人の想いとして②③を基に長男長女土地建物全てを半分ずつと主張することとなりました。
結果として、平行線の話し合いが続くこととなってしまいました。

随分と長く遺産分割協議は平行線のまま進むこととなり、一時は調停に持ち込むというほど、険悪なムードではありましたが、誰もこのような結果を望むわけもなく、何よりも揉めないためにと被相続人の方が残したご遺言がきっかけとなってしまったことは被相続人の想いをもってしても何とも言い難い状況ではございました。
調停は誰も望まない結果となるため、相続人間でよく話すことをお勧めし、じっくり話し合う機会を設けることとなりました。
私も同席しましたが、そこでお二人がそれぞれ思っていることを何度も正直にお話し頂くことで、お二人の溝は徐々に埋まり、何とか調停にならず、結果として土地建物全てを半分ずつ共有で引き継ぐということでご納得されました。

一時は、どうなるかと思った遺産分割協議ですが、最終的に終わってみれば、お二人からは大変感謝され、今では共有でお持ちのお二人の賃貸不動産の確定申告をお手伝いさせて頂いております。

このケースからわかることとしては、生前に対策を行う際には、「笑顔相続」に向けた、適切な対策を行う知識が必要であるということです。

そこで、相続の基本的な知識を身につけ、お客様に「相続診断」ができ、そして生前から相続問題や思いを残す大切さを伝えていき、お客様と一緒に相続と家族の問題に向き合っていける「相続診断士」の皆様がお客様の「想い」を汲み取ることが大切になります。
またその中で、相続についてトラブルが発生しそうな場合には、パートナー事務所として登録させていただいている同じ「相続診断士」である私たち税理士などと一緒に、お客様に遺言をはじめとした相続対策をすすめていくことは、「笑顔相続」を実現するために必要不可欠だと思っております。

迷われた際は、是非、パートナー事務所である私どもにお気軽にご相談ください。

 

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