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【vol.95】多数の相続人が存在する遺産分割協議について

みなさま、はじめまして。愛媛県松山市にある司法書士・社会保険労務士白川法務事務所代表の白川大介と申します。
弊所は相続発生前後における手続き業務に力を入れており、相続登記手続、遺産承継手続、遺言執行、遺言書作成支援などに日々取り組んでおります。

今回は、私が受任した遺産承継業務で少し難航した事例についてご紹介させて頂ければと思います。

数年前、相続人の一人から、相続人の叔母が亡くなったので、相続手続きをお願いしたいという依頼がありました。
被相続人には子供はおらず、夫、両親、兄弟には先立たれていました。その場合、兄弟の子供が相続人となりますが、兄弟は5名おり、それぞれの兄弟に子供がいたため、相続人は依頼人を含めて12名いました。
幸い12名の相続人のうち、10名とは既に話がまとまっていました。しかし残りの2名の相続人のうち1名は行方が分からない状態、もう1名は認知症が疑われる状態との事でした。
そこで行方不明の方については不在者財産管理人の選任申立て、認知症が疑われる方については成年後見人選任申立てを視野に入れて、遺産承継業務を受任することとなりました。

補足になりますが、相続人に行方不明の方がいる場合、不在者財産管理人を家庭裁判所に選任してもらい、不在者財産管理人が行方不明者に代わり、遺産分割協議を行うこととなります。
また相続人に認知症で判断能力が低下している方がいる場合、成年後見人等を家庭裁判所に選任してもらい、成年後見人等が認知症で判断能力が低下している方に代わり、遺産分割協議を行うこととなります。

まず行方不明の方については、不在者財産管理人選任申立て書類作成のご依頼を頂きました。
初回の相談の時に行方不明の方の戸籍の附票を見せて頂いたところ、行政により住所が職権で消されていて、住所不明ということでした。
念のため、再度戸籍の附票を取得したところ、新しい住所が設定されていたため、相続人から新しい住所に宛てて相続の話し合いに応じて欲しい旨の手紙を送って頂きました。
しばらくすると行方不明の方から相続人に連絡があり、行方不明の方との話し合いが無事まとまりました。

認知症が疑われる方については、成年後見申立て用の診断書を取得したところ、判断能力に問題はないとのことで、成年後見人を付ける状態ではなかったため、相続人とその方との間で遺産分割協議をして頂き、話がまとまりました。

ところが今度は別の相続人が脳梗塞で倒れて、入院することになったという連絡がありました。
その後、その相続人は施設に入所することとなり、医師に認知症検査をしてもらった結果、認知症で後見人を付けないとならない状態との事でした。
そこで急遽、成年後見人選任申立てを行うこととなり、数ヶ月後、成年後見人が選任され、相続人と成年後見人間で遺産分割協議を行いました。
成年後見人が選任された場合、被後見人である相続人には法定相続分以上の相続分を確保しなければならないため、当初の相続人の想定していた相続財産の配分額とは異なるものとなりましたが、成年後見制度の意義を説明して理解して頂きました。

紆余曲折ありましたが、このようにして遺産分割協議がまとまり、不動産登記手続及び預貯金の解約手続を行い、各相続人に相続財産を配分することが出来ました。

最後に、このような多数の相続人がいる場合、生前に遺言により特定の人に財産を譲りたいということを書いておけば、スムーズに遺産の承継が出来るので、遺言の作成をお勧めします。

 

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