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【vol.80】『二次相続における小規模宅地等の特例適用も踏まえた円満な遺産分割』

はじめまして、長野県松本市の税理士法人未来経営に所属しております、税理士の熊井玄基と申します。
弊社では、複数の税理士を中心とした資産税の専門部署を設け、税務申告等を中心に相続のお手伝いをさせていただいております。
今回は、相続税申告において最近経験した事例についてお話をさせていただきたいと思います。

相続人の状況及び被相続人の財産状況は以下の通りでした。
<相続人の状況>
妻、長男、次男の3人
<主な相続財産及び評価額>
自宅敷地(※):4,000万円(面積400㎡)
自宅家屋(※):1,000万円
金融資産:1億5,000万円
(※)自宅は被相続人と長男の2世帯住宅となっており、敷地は100%被相続人の所有、家屋は被相続人住居と長男住居で区分登記されている。

今回のケースでは、遺言も無く、相続人間では上記財産を法定相続分に応じて分割するのが絶対条件であり、私のところへお越しになった時の分割案は以下の通りでした。
<分割案>
妻 :金融資産1億円
長男:自宅敷地4,000万円+自宅家屋1,000万円=5,000万円
次男:金融資産5,000万円
<相続税額>
妻:配偶者の税額軽減により0円 長男:560万円 次男:560万円
妻としては老後の資金として金融資産を相続し、不動産は管理や将来の相続の事も考慮し、長男が相続することを希望していました。
次男も相続するのは金融資産のみであり、納税資金には困りません。
しかしこの分割方法だと、長男の納税資金が確保できないことや、今後の不動産の維持費等も考えると、長男には金銭面での不安が募っていました。

そこで私は相続人へ以下の分割案を提案しました。
<分割案>
妻 :自宅敷地のうち3,300万円(330㎡相当額)+金融資産6,700万円=1億円
長男:自宅敷地のうち700万円(70㎡相当額)+自宅家屋1,000万円+金融資産3,300万円=5,000万円
次男:金融資産5,000万円
<相続税額>
当初の分割案と同じ分割案につき工夫した点は以下の通りです。
① 長男が相続する予定だった自宅敷地について妻と長男の共有とし、将来妻に二次相続が発生した際に、長男が自宅敷地について特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例を限度面積まで適用できるようにしました。
② 自宅家屋はそれぞれ区分登記がされており、現状のままでは小規模宅地等の特例は使えないため、早急に弊社と連携のある土地家屋調査士と司法書士に建物合併登記の依頼をして将来特例の適用を受けられるための準備を整えました。
③ 長男は無事納税資金を確保することができ、大変喜んでいただけました。また、この分割方法により小規模宅地等の特例も使えることになった事から、将来の相続税額も250万円ほど節税できる事になり、他の相続人の納得も得ることができました。

今回のケースを通して、円満な遺産分割を実現するには、小規模宅地等の特例の適用の検討も含め二次相続までを踏まえたシミュレーションが大変重要だという事を実感しました。
また、他士業との連携を厚くしておくことも、相続の業務においては重要だという事を改めて感じました。
今後も、少しでも多くのお客様の笑顔相続実現のために、相続診断士として誰かの役に立てる業務ができればと思います。

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