相続診断協会は、相続診断士の認定発行・教育・サポートを行っている機関です。

相続診断協会相続診断協会
0366619593

【vol.75】『審判覚悟の相続から一転「笑顔相続」へ』

相続診断士の皆様 初めまして。札幌市南区で尾崎祐一法律事務所を経営しております弁護士の尾崎祐一と申します。
個人の依頼者を中心とした案件が比較的多いですが,会社の法律顧問もお引き受けしております。
相続が関わる案件は,昭和63年に弁護士登録以来相当数解決しているものと自負しております。

今回お話しさせていただく案件は,私が10年以上前に取り扱った遺産分割の事件です。
お母様が亡くなられ,相続人としてはお子様である長女,二女そして長男がおられました。遺産としてはお母様がお住まいだった御自宅のみだったかと思います。
お母様は遺言を残しておられませんでしたので,本来であればこれら3人のお子様が分割協議をしてお母様の上記御自宅を売却して売買代金を分ければ,それでお母様の相続は終わりになります。

ところが,長男がお母様とお母様の前に亡くなられたお父様の事情により幼少期に親戚の家に預けられることとなり,その頃から長女及び二女と長男とは疎遠になってしまいました。
最初,私が相談を受けた際には,長女及び二女において戸籍謄本で相続人を探索し,さらに長男の住所についても見つけ出しているものの,長女及び二女が長男に対してお母様の相続について相談したい旨のお手紙を10回近くにわたって郵送しても何も言ってこないという状況でした。
そこで,弁護士名で長男にお手紙を書いたのですが,それでも長男からは何も言ってきませんでした。

そのまま手を拱いていても埒が明かないので,私は,長女及び二女に対し家庭裁判所に対してお母様の遺産分割の調停を申立てこと,恐らく長男は調停期日には来ない可能性が高いので,その場合は裁判官に遺産分割の審判をしてもらうことで解決することを提案しました。長女及び二女は,私がご説明した内容を十分理解して下さり,直ちに家庭裁判所にお母様に関する遺産分割調停を申立てました。
申立後約4週間後に第1回の調停期日開かれました。私は,従前の経緯に鑑み長男は出頭しないものと考えておりました。
しかし,調停期日で書記官から聞かされた言葉は「ご長男の○○さんは出頭されています。」という言葉でした。私も,長女及び二女も予測がはずれて驚きました。

調停期日が始まり,調停委員を介してこれまで連絡をくれなかった理由を聞いてもらったところ,長男は、「今までお姉さん方とは子どもの頃に別れて暮らし始めてから行き来が全くなかったので,お母さんの遺産の話をするのは心苦しく返事をしなかった。しかし,今日は裁判所からの呼出しなので出向いてきた。」とのことでした。
審判前提で申立てた遺産分割調停ですが,途中で調停委員に席を外してもらって,長女及び二女の思いと長男の気持ちをお互い伝えあい,最後には遺産である御自宅を売却し,売買代金について各相続人が法定相続分を取得することで話合いができ,第1回調停期日で解決しました。 まさに笑顔相続で終わったのです。

長男からは,自分が幼少の頃に親戚に預けられたことや長女及び二女のように両親の愛情を受けて育つことができなかったことについて恨みがましい発言は全くなく,却って売買代金について法定相続分を取得できることへの感謝の気持ちが表されました。
結果的に「笑顔相続」に終わって何よりだったと思います。

PAGE TOP