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【vol.74】『親族外の後継者に事業を円満に継がせるためには』

相続診断士の皆様、はじめまして、弁護士の堂野達之と申します。
東京都中央区銀座にある、総勢11名(2020年5月現在)の弁護士が所属する堂野法律事務所の所長を務めております。
当事務所は、会社の事業承継が絡む複雑な相続案件を多く扱っており、利害関係人の調整、会社の経営の方向性についての相談を得意としております。

今回お話しするのは、当事務所が実際に携わったケースです(多少デフォルメしています)。
会社のオーナー社長(普通株式を100%所有)には実子がいますが、実子は会社の経営には全く関わっておらず、血縁のない従業員が後継候補者になっていました。
社長からは、ご自身に相続が発生したときに、会社の経営は後継候補者の従業員に引き継がせたいが、実子に相応の資産を継がせてあげたいという相談がありました。

当事務所は、社長の思いを実現するために、次のスキームを提案しました。
会社の株式には種類株式という特殊な株式があり、株主総会決議で定款を変更することにより、様々な種類の種類株式を設計することができます。
そこで、株主総会の議決権はないが、配当や残余財産の分配を(普通株式に比べて)優先的に受けられるという種類株式(便宜上「無議決権株式」といいます。)を、既に所有している普通株式とは別に発行することにしました。社長が普通株式を100%所有しているため、株主総会決議は滞りなく行うことができました。
その上で社長に公正証書遺言を作成してもらい、普通株式は後継候補者の従業員に遺贈し、無議決権株式は実子に相続してもらうようにしました。従業員に課税の負担が無いように、株式数は無議決権株式をかなり多くしました。
ただし、そのままでは、無議決権株式を相続した実子には高額の相続税が発生するというネックがありました。そこで、社長の相続発生後は、会社が自社の賃貸不動産を売却してその代金を原資にして実子の無議決権株式を自己株式として買い取り、実子は自己株式の代金から相続税を負担することとして、この点は(社長の相続発生後に会社を支配することになる)後継候補者の従業員にも合意してもらいました。
遺言作成の数年後に社長が逝去しましたが、事前に合意したとおりに全て実行されたため、会社の経営は後継候補者の従業員が引き継ぎ、実子は相続税を差し引いた株式譲渡代金を手にすることができ、社長の思いを円満に実現することができました。

【最後に】
オーナー経営者の相続にあたっては、「経営権」と「財産権」を分けて考える必要が出てくるケースがあります。その際に、事前にきちんと準備をしておけば、それぞれを分けて別の人に帰属させることができます。ご参考にしていただけると幸いです。

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