【vol.72】『「相続財産の寄附」という笑顔相続の選択肢について』
皆様、はじめまして。税理士の片岡徹也と申します。令和元年8月に、京都市伏見区で京都かたおか税理士事務所を開業し、10月に相続診断協会のパートナー事務所として登録をさせていただきました。今後ともよろしくお願い申し上げます。
先日、相続財産の寄附をご希望される相続人のお客様からご相談がありました。
そこで、この相談案件の事例をもとに、今回のコラムでは「国等に対して相続財産を贈与した場合の相続税の非課税等の規定」についてお伝えをしたいと思います。
この案件は、相続人のご兄妹で、遺産分割を争われている案件でした。
被相続人であるお母様は昨年(令和元年)にお亡くなりになったのですが、遺言書(自筆証書遺言)が二つあり、一つは被相続人であるお母様の筆跡のものであるのですが、もう一つの遺言書がお母様のとは明らかに異なる筆跡のように思われるものでした。
現在は、弁護士を通して、遺言書検認の申立を行っている状況です。ご相談を下さったご兄妹のうちのお兄様は、「父が築いた財産であるので、兄妹で遺産分割で揉めるのであれば、寄附をすることが一番いいと思いますが可能でしょうか。その方法を親も望んでいると思います。」とおっしゃいました。
それでは、この相続財産の寄附とはどのような規定なのでしょうか。
相続税には非課税財産の規定があり、「国等に対して相続財産を贈与した場合」にも、非課税の規定が適用されることになります。
具体的には、相続財産を申告書の提出期限までに国、地方公共団体、公益社団法人等又認定特定非営利活動法人に贈与した場合におけるその贈与財産及び特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭は、公益性の見地から相続税を課税しないこととされています。
ただし、その贈与をすることによって、贈与者やその親族の税負担が不当に減少するなどの意図的な課税回避が認められる場合には非課税とはなりません。
従って、例えば、相続した土地、建物を縁故者が主宰する公益社団法人等に贈与し、この財産を定額の地代家賃で借り受け、私的な目的で使用するような場合であれば、課税対象となります。
前述の案件は、現在、結論はまだ出ていない状況です。本来は、兄妹で争うことなく「笑顔相続」をしていただくことが望ましいですし、それが私たち相続診断士に求められている役割であると思います。ただ、このご兄妹がこの「寄附」をすることにより「争族」とならないのであれば、これも「笑顔相続」の一つの形であるのかもしれません。