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【vol.71】『生前贈与や小規模宅地等の特例は、より感情論を重視して!』

東京・名古屋の2拠点で相続専門税理士法人の代表を務めております木下勇人と申します。
早いもので、法人を立ち上げ早10年が経過しようとしています。今では全国の税理士事務所から業務依頼(相続税申告書レビュー、事業承継案件受任等)をいただけるようになりました。
これまで数多くの相続事例(事前対策を含む)を対応しておりますが、今回は、ある税理士先生からの相談案件とその対応をお伝えさせていただきます。

まず1つ目です。消費税10%上昇への対応策として住宅取得等資金が要件を満たせば3,000万円まで非課税で贈与できることになりました(ただし、期間限定)
節税対策でよく使われる生前贈与。税理士事務所へ頻繁に質問されるのは適用要件を満たしているかの確認です。税理士の役割から考えた場合、確かにそのとおりかもしれません。
ある税理士から私へ要件確認の依頼がありましたが、私からは要件確認の回答とともに、もう1点アドバイスを差し上げました。
内容は、特別受益に該当することです。持戻し免除は当然ないため、特別受益や遺留分算定基礎への戻しが懸念されます。
親族関係を事前に把握し長男に兄弟姉妹がいないかの確認を依頼しました。
理由は簡単。同じ相続人であるにもかかわらず兄弟姉妹間で不平等感を生じさせてしまうためです。

次に2点目です。相続税申告における質問事項や私からのレビュー事項で頻繁に登場するのが「小規模宅地等の特例」です。
配偶者へ適用する場合には一次相続であるため、問題が生じる確率は高くありません。
問題が生じやすいのは子世代へ小規模宅地等の特例を適用する場合です。
小規模宅地等の特例を適用すれば相続税総額が下がりますので、相続人全体として喜ばしいように感じるかもしれません。
しかしながら、小規模宅地等の特例の適用を受けた相続人(親族の場合あり)は特に相続税負担の減少度合いが大きくなります。その場合、他の相続人からすると適用される相続人だけが大きく減少するため、代償金が欲しいと主張するかもしれません。
また、遺産分割協議を小規模宅地等の特例適用後の相続税評価で行えば、兄弟姉妹間では激しく不平等になります。

遺産分割は原則時価で行うことを鑑みれば、その点も考慮した遺産分割が望ましいというのは間違いありません。
今後、税法上の各種特例を適用する場合には要件確認だけでなく、遺産分割での平等感を鑑みた提案をされることをお勧めします。
相続人は感情論で動いてしまうものですから。

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