【vol.65】『家族への手紙が支えた家族の心』
相続診断士の皆様初めまして。私は、東京都世田谷区砧の地で、相続手続きや遺言作成のお手伝いをしております、行政書士長谷川憲司事務所の長谷川です。
ご主人様を長い闘病生活の末期がんにて亡くされた、ご家族の話を致したいと思います。
最初の診断は「帯状疱疹」でしたが、状態が思わしくなく、精密検査をしたところすでに末期のがんと判明したのです。
がんの告知はご主人様と奥様で受けられたのですが、奥様が一時記憶障害のような症状を発症されるほどショックが大きく、二人のお嬢様も気丈にふるまわれていましたが、はたから見ても非常に痛々しいものでした。
緩和ケア病棟に入院してしばらくの後、ご主人様が旅立たれました。息を引き取られたのが真夜中であり、ご家族が駆け付けられた際、私も立ち合いを要請されました。
ご承知の通り、ご遺体をそのまま病院にお願いするわけにはまいりません。そこでご家族は葬儀をどうするのか、相続手続きは何をすればいいのか等、全体が見通せないことからくる不安に包まれていらっしゃいました。
病院と提携している葬儀社さんにご遺体を自宅へ運んでいただき、今後どうすればいいのか皆さん困り果てていらっしゃいました。
私は生前ご主人様がルーズリーフを使用しての「エンディングノート」のようなものをご用意されていたことを伺っていたので、奥様やお嬢様にその旨お話をして心当たりを探すことに。
そのノートはTV台の書類の真ん中に収められてました。拝見すると、菩提寺のこと、葬儀のこと、葬儀社のこと、相続の意向(有効な遺言の形ではありませんでした)、そして奥様やお嬢様への感謝のお手紙が残されておりました。
ショックの大きさから認知症の初期症状のような状態であった奥様が、お手紙を読みながら大粒の涙を流されておられました。そして読み終わったときに奥様の表情が、全くの別人のような真剣な表情に変わられたことに非常に驚いたことを覚えております。
奥様が、ご主人様の遺されたノートを頼りにしながらも、かなり立派な葬儀を取り仕切ることができたのは、あの「お手紙」の力が大きかったと思います。
納骨まで済ませたのち相続の話し合いが持たれました。遺産の半分は不動産であり、相続人で法定相続分にて分割するには売却するしかない状況でしたが、ご主人様のお手紙を読まれたお嬢様二人が、それぞれの相続分を奥様に譲る形で円満に遺産分割がなされました。
笑顔相続を迎えるためには、感謝の気持ちを具体的に表現することが何より大切なことなんだと改めて思った次第です。そのことがあるからこそ、遺言やエンディングノートの内容を、ご遺族が受け入れることができるのではないかと思います。