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【vol.63】『遺言がなかったことが幸いした相続の事例』

初めまして、山口県で相続手続きや遺言書の作成のサポートをしております つぐみ行政書士事務所の小田葉子と申します。

先日、私が出会った笑顔相続の事例がありますのでご紹介させていただきます。

お亡くなりになられたAさんと奥様の間には子供はいませんでしたが、前妻との間に子供が一人いらっしゃいました。
しかし、そのお子様とは、長い間連絡がとれなくなっており、どこに住まわれているのかもわからない状況でした。

このままでは相続手続きが進まず、お二人で築いてこられた財産を奥様に受け継ぐことに支障がでてしまうのではとAさんは心配されていました。相続財産にはお住まいや事業の株式なども含まれていたからです。
そこで不在者がいる場合の相続手続きがどうなるかということと、遺言を遺した場合の有用性についてお知らせしたところ、遺言を作成することに前向きになっていらっしゃいました。

しかし、それからすぐにAさんは体調を崩されて入院され、結局 遺言を遺すことなくお亡くなりになられてしまいました。
奥様から訃報の連絡を受けた時、この相続は大変な相続になるかもしれないと覚悟を決めた一方で、遺言を遺せなかったことが本当に悔やまれましたが、その相続は思わぬ展開で幕を閉じたのです。

実は奥様は血のつながらない息子さんのことをとても心配されており、
相続財産を法定相続分できちんと分割することも望んでいらっしゃいました。

お子様の親権をAさんがお持ちだったこともあって、お二人はご家族同様に暮らしていた時期もあったとのこと。
なんらかの原因で連絡のつかない間柄になっていましたが、家族としての思いやりは持ち続けていらっしゃいました。

その後、息子さんの住所を調べてお手紙でAさんがお亡くなりになられたことや奥様がご心配されていることをお伝えしたところ、思いのほかすぐに息子さんと連絡がとれ、その後はお二人で協力して相続手続きを終わらせることができました。

もしも、Aさんが遺言を作成していたら、お二人が顔を合わす機会もないまま、相続手続きが終わり、奥様の気持ちが息子さんに伝わらないばかりかお互いの距離をさらに遠ざける結果になっていたかもしれません。
遺言がなかったことが結果的に笑顔相続になったという異端な事例となりました。

相続に不安が残る要因がある場合は、遺言を遺すなどの生前対策をしておくのは大変有効ですし、私もそれをお勧めしています。
しかし、過剰な生前対策はかえって相続人の人間関係を悪化させる場合もあります。

遺言を作成するときは、遺言者の意思を尊重しながら、遺言を作成することになった背景や、時には相続人の考え相続人主導の遺言にならないように注意が必要ですが)などいろいろな要素を考慮して、もしも相続人が不平等になるような遺言であれば必ず付言を添えて残されたご家族の皆様が穏やかな気持ちで相続を終えることができるようにサポートすることが必要ではないかと考えます。

 

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