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【vol.56】笑顔相続の事例

相続診断士の皆様、はじめまして。
相続診断協会でパートナー事務所をさせて頂いております公認会計士・税理士の大畑伊知郎と申します。

大学卒業後、都市銀行に約10年勤務後、公認会計士・税理士となったという変わり種です。
銀行員時代は、相続手続や相続税について苦手意識を持っていたのですが、今やそんな自分が懐かしく思えるぐらい、日々相続の仕事に没頭しています。

今回ご紹介したいのが、知り合いのA弁護士からの紹介で相続税申告をさせて頂いたBさんの事例です。
Bさんの父が亡くなられ、相続人は母、Bさん、兄の子(Bさんからすると甥)、の3人です。

Bさんはずっと父の近くに住んでいて、生前父の面倒を見ていました。一方、既に亡くなっている兄は、若いころに家を出て遠方で暮らしており、Bさんとは疎遠となっていました。
父の相続が発生して甥と手紙で遺産分割協議をするもまとまらず、弁護士を立てて交渉することになったのです。

私はちょっと悩みました。相続税の申告は、相続人全員が共同でするのが原則です。
相続人間で別々の税理士を雇った場合、同一の相続でありながら、財産評価の内容が相続人間で相違するなど、恰好の税務調査の対象となります。

そこで私は、先方の相続人に直接私から説明させてもらえないかと、BさんとA弁護士に次のような提案をしました。

・対立する相続人間で別々の税理士を立てるのは不合理かつ不経済であること
・税理士はすべての相続人に対して中立的に申告書を作成するものであること


私の提案をBさんとA弁護士は承諾され、私は単身、Bさんの甥に会いに行きました。
実際にお会いしてみると、意外なほど素直に私の説明に耳を傾けてくれました。
その結果、Bさんの甥も私に税務申告を依頼して下さることになりました。

財産評価が終わったあと、A弁護士が調停案を示しました。
その調停案は、残された母の生活やお墓の管理の問題も踏まえて双方が納得できるようなラインを探るものでした。

ほどなくして、先方の弁護士から、A弁護士の調停案を受け入れるとの申出がありました。
遺産分割協議書がまとまり、何度か郵送でのやりとりの後、無事、期限内に申告書を提出することができました。
最後にBさんが私の事務所に来られたとき、こちらが当惑するぐらい何度もお礼を言われました。

 

笑顔相続を実現するためには、専門知識の活用だけでは不十分です。
なぜなら、節税とか、より多く財産をもらえるといったことが、すなわち当事者の満足や幸せにつながるかというと、必ずしもそうとは限らないからです。

このケースでは、相続人間の関係が疎遠になってコミュニケーションが不足していたことが対立の背景にあったようです。
A弁護士の心のこもった調停案と、相続税の申告書を相続人全員で共同で提出できたという事実が、笑顔相続につながったのではないかと思っています。

 

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