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【vol.55】未曾有の認知症社会到来!家族信託と認知症対策

相続診断士の皆様、こんにちは。

東京表参道で司法書士法人を開業しております元木翼と申します。
1年ほど前より相続診断協会のパートナー事務所としてお手伝いをさせていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

弊社は相続業務をメインとしている事務所ですが、近年は徐々に家族信託・任意後見・遺言等の生前対策業務の割合が増えてきています。

今回は、弊社の生前対策業務の中から事例を1つご紹介したいと思います。

事例

ご相談者のAさんは81歳。元々体力には自信を持っていましたが、80代となり最近では衰えを感じることも増えきたようです。
以前に比べて物忘れも多くなってきたため認知症を発症しないかどうかもとても心配していました。

Aさんには妻B(76歳)と、長女C(50歳)、長男D(48歳)がいます。
お子様2人はそれぞれに家庭を持ち、ご自宅とは別の場所で暮らしていますが、どちらかというと長女Cの方が何かと心配し、実家に顔を出してくれているようで、ご両親ともCを頼っているようです。

資産状況は、ご自宅(相続税評価額約5,000万円)、アパート1棟(相続税評価額約7,000万円)、そして金融資産が約4,000万円ほどありました。
Aさんが今後の不安として挙げたのは次の2点です。

①万が一認知症を患った場合の自分の財産の管理

認知症になると判断能力を喪失し、自分の財産の管理・処分ができなくなる可能性があります。
これまで財産の管理はすべてご自身で行ってきたAさんでしたが、もし認知症を発症し、自身での管理が困難になった場合、その後のお金や不動産の管理はCに任せたいと希望されていました。
特に賃貸用の不動産は老朽化の懸念があり、今後、大規模修繕や建替えなどを検討しなければならない時期に差し掛かっており、それらに伴う諸々の手続きを自身でできるか心配しておりました。

②自らが先に亡くなった後の妻の生活

自分が先に亡くなった場合でも、その後のBの生活を今までどおり不自由のないものにしてあげたいというご希望をAさんはお持ちでした。

本事例では、Aさんの不安を解決するために家族信託という方法をご提案しました。
家族信託とは、不動産やお金などの財産の管理や承継を信頼できる家族に託す制度です。
家族信託では、財産の管理を託す人を「委託者」(いたくしゃ)、財産の管理を託される人を「受託者」(じゅたくしゃ)、信託から利益を受ける人を「受益者」(じゅえきしゃ)といいます。
高齢の親(委託者)が、自らを受益者として、子供(受託者)に財産管理をお願いするケースが家族信託では最も多いケースです。
元気なうちに子供に財産管理を託しておくことで、親が認知症などで判断能力を失った後でも、資産の凍結を防ぐことができます。
認知症高齢者がますます増えていくなかで、認知症対策としての家族信託の利用は今後増えていくことでしょう。

Aさんのケースでは、委託者をAさん、受託者を長女C、当初受益者をAさんとし、信託財産を自宅、賃貸用不動産、金融資産の一部とする信託契約を締結しました。
これにより、Aさんが認知症になった後でも、長女CがAさんの財産の管理や処分を行うことができますので、上記Aさんの不安①を解消することができました。

更に、信託契約においてAさん死亡後の第2受益者を妻Bとすることで、Aさん死亡後においてもBは住まいを確保され、安定的に家賃収入を受け取ることができますので、上記Aさんの不安②も解消することができました。なお、本事例では別途遺言の作成や任意後見契約の締結を行い、信託財産以外の財産管理や承継、身上監護の問題についても対策を行いました。

2025年には認知症患者数は約700万人(高齢者の5人に1人、軽度認知障害まで含めると約1200万人、3人に1人というデータもある)に達すると予想されています。
本事例のように収益物件をお持ちの方はもちろんのこと、今後はどの家庭でも認知症リスクに備えることが必須となってくるでしょう。
したがって、相続診断士の皆様に置かれましても、遺産分割対策や相続税対策だけでなく、今後は認知症対策についても理解を深めておく必要があるといえます。

本事例で、家族信託を用いることによりAさんの生前の不安、更にはご自身の死後の不安も払拭することできました。Aさんは現在もとてもお元気に過ごされています。笑顔相続への道は、お元気なうちに備えをすることが何より重要であると実感した案件でした。

 

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