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【vol.42】保険金と特別受益

皆さま、こんにちは。山越総合法律事務所の代表弁護士の山越真人です。
今日は最近気になっていることについてお話します。

相続診断士の資格を持っている方も含め、保険の営業の方からよく
保険金は相続人固有の財産になるので相続財産に含まれませんよ」という話を聞くことがあります。
この内容は正しいです。

しかしながら、この内容が仮に「死亡保険金請求権が相続財産への持ち戻しの対象になることもない」という内容も含むものとすると、問題があります。

私が経験した事例に即して考えてみましょう(ただし、金額はわかりやすい金額に変更しています)。

 

事案

Aが死亡し、相続人として妻Bと子C,Dがいたのですが、
Aの遺産は2000万円しかない一方で、妻Bを受取人とする死亡保険金請求権が1億円ありました。

この場合、Bは1億1000万円(相続分1,000万円(2,000万円×法定相続分2分の1)+死亡保険金請求権1億円)を取得し,

C,Dは各500万円(2,000万円×法定相続分4分の1)しか取得し得ないと一見思われました。

このような結論には不公平感が生じますよね。
この事案では親子仲もよくはなかったので、かなりもめました。

私はCの代理人に就いていたのですが、
Cの要望に応えて笑顔相続を実現するために、死亡保険金請求権を特別受益に準じて相続財産に持ち戻しできないかなと考えました。

このように保険金の額が遺産の額を大幅に超える事案について、
最高裁平成16年10月29日決定は,

死亡保険金は、・・・保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が同条の趣旨に照らして到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、・・・特別受益に準じて持戻しの対象となると解するのが相当であり、特段の事情の有無については、保険金の額、この額の遺産総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである

と判示しました。

そして、この最高裁の決定を受けてその後に出された裁判例を見ると、

だいたい保険金の額が相続開始時の遺産総額の60%を超える場合には、上記特別の事情があるとして死亡保険金請求権が特別受益に準じて持ち戻しの対象となる可能性が出てきます。

 

このような裁判例もあったので、私の事案でも判例に従って死亡保険金請求権を相続財産に持ち戻す前提で交渉を進め、ある程度笑顔相続を実現できました。

このような結論からすれば、保険の営業の際などには、「可能性は少ないが、死亡保険金請求権が相続財産への持ち戻しの対象になることはあり得る」ということを意識して話をしていただいた方がよいと思います。

 

 

 

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