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【vol.40】笑顔相続の肝は「礼節」と「傾聴」にあり

初めまして。札幌で弁護士をしております阿部竜司と申します。

弁護士は,やはり裁判等の法的手続を代理する専門家というイメージが強いせいか,どちらかといえば,相続発生後に相続人間で争いが生じている場面でご相談いただくことが多くなっております。

そのような,争いになっている相続案件を経験してきて気づいたのが,笑顔相続の肝は「礼節」と「傾聴」にあるということです。

 

事例

当事者は,被相続人Xさん(父親),相続人Aさん(後妻),Bさん(養子〔妻の連れ子〕),Cさん(前妻との子)という方々でした。

Xさんが亡くなられ,AさんとBさんが一緒に暮らしている土地の共有持ち分の一部と,数百万円程度の預金が分割対象となる遺産でした。

 

私はAさん・Bさんからご相談を受け,Cさんの所在を確認し,(Aさん・Bさんの希望する)遺産分割協議に応じていただくことについてご依頼を受けました。
幸い,Aさん・Bさんは,預金の法定相続分(4分の1)をCさんに分割することについては異論がなく,土地の共有持ち分についてのみ,AさんかBさんが全て相続する形を取りたいというご希望でした。

Cさんにご連絡を取るにあたって私が気をつけたことは,本稿のタイトルどおり,「礼節」と「傾聴」の姿勢でした。

 

最初の接触は,こちらからのお手紙のご送付でした。

お手紙では,まず,長らくXさんと疎遠になっていたCさんは,Xさんがご逝去されたことも知らない可能性があるので,そのことからご説明しました。

それに続いて,登記や通帳のコピー等の各種資料を添付しつつ,遺産の全貌を詳細にお伝えしました。

 

その上で,預金については法定相続分で分割し,土地についてはこちら側(AさんかBさん)で全ての持ち分を相続させていただく形を希望したい,という意向をご説明しました。

土地については,法律の原則としては土地も法定相続分での分割対象となることを前提としてご説明しました。

その点を踏まえつつ,

・既に土地上にある建物(※Bさんの夫名義)でAさんとBさんが生活を共にしていること
・共有持ち分の時価はさほど高額ではないこと
・葬儀費用はAさんとBさんで負担していること

 

等を織り交ぜて,Aさん・Bさんが持ち分全てを相続することを希望する理由としてご説明しました。
そして,(Cさんの言い分に対する傾聴の姿勢を示すため)最後に,疑問点や,確認したいこと等があったら遠慮なくご連絡をください,という形で,文書を締めくくりました。

お手紙のご送付後,数日してすぐにCさんからご連絡を頂き,こちらの希望どおりで構わないとのお返事を頂くことができました。

 

具体的にCさんから言っていただけたわけではありませんが,こちらが遺産分割の前提となる情報を詳らかにし,また,一方的にこちらの希望を押しつけるのではなく,Cさんの疑問や言い分等もお聴きしながら進める意向であることを示したことがプラスに働いたのではないかと考えております。

相続に限らず,人と人の紛争においては,相手に対する礼節や誠実さ,そして傾聴の姿勢を欠くことにより,本来的には争いにならなくてすんだことが不必要に争いになってしまうというケースが多くあります。

 

上記の事例でも,例えば,遺産の内容について詳細を示さないでこちらの希望だけを伝えたり,法律上はCさんにも権利があるということを前提にせず,さもAさん・Bさんが土地を相続することが当然かのような態度でCさんと接していたりしていたら,かえってCさんがこちら側の姿勢に対して不信感を持ち,「争族」状態に陥っていた可能性もあったと思います。

(既に多くの方がそのような姿勢で臨まれているかと存じますが)相続診断士の皆様におかれましては,ぜひ,改めて笑顔相続における「礼節」と「傾聴」の重要性を意識して,相続案件のコンサルティングを行っていただけますと幸いです。

 

 

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