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【vol.38】気持ちを伝えることの大切さ

相続診断士の皆様、こんにちは。
行政書士の上田健介と申します。

私の事務所は、北海道の長沼町という人口11,000人あまりの小さな町にあります。長沼町の近隣には、札幌市・北広島市・恵庭市・千歳市などの都市がありますので、日々、いろいろな場所でお客様とお話をさせていただいています。

本日は、私が関わらせていただいた案件の1つをご紹介させていただきます。

 

事例

 

ある日の朝、Aさん(50代・男性)から電話がかかってきました。

Aさん: 「子供たちの前で遺言書を作りたいのですが、どのように作れば良いのかわからないので、手伝ってもらえませんか?」

私: 「それでは、〇日△時にご自宅へお伺いします」

 

遺言書の作成に関するご相談はそれほど珍しいことではありません。しかし、子供の前で作成するというパターンは初めてでした。

そして訪問日。ご自宅には、Aさんとともに、長男のBさんと長女のCさん(ともに20代)がいらっしゃいました。奥様は5年前に病気で亡くなられたとのことです。

Aさん: 「今から2人の前で遺言書を作成するが、その前に私の気持ちを伝えたい」

Bさん・Cさん: 「お父さん、まだ元気なのに…(笑)」

Aさん: 「まあいいから、とりあえず聞いてほしい」

 

遺言書は、BさんとCさんで相続分に差がある内容になっていましたが、Aさんは、その理由を丁寧に説明されました。
その結果、言い争いが始まることはなく、無事、遺言書を作成することができました。

遺言書作成から約1ヶ月が経過したある日の夜、Bさんから電話がかかってきました。

Bさん: 「昨日、父が亡くなりました」

私: 「………え!?」

 

風邪にすらほとんどかかったことがないと自慢されていたAさんですが、入浴中に突然意識を失い、そのまま亡くなられたとのことでした。

法要や諸手続きがひと段落した後、BさんとCさんが揃って私の事務所に来られました。

Bさん・Cさん: 「生前に気持ちをしっかり聞くことができたので、すべてを協力して進めることができました」

 

もし、Aさんが自らの気持ちをBさんやCさんに伝えることなく、相続分に差がある遺言書だけを作成されていたとしたら、BさんとCさんの関係は悪化していたかもしれません。

遺言書を作成する人がまだまだ少ない中で、その作成だけにとどまらず、生前に自らの気持ちを丁寧に伝えようと考えられたAさんに対して、改めて尊敬の念を抱きました。

口で言うのは簡単でも、実際にはとても難しいことであることは十分に承知しています。それでも、私はAさんの例を引用させていただきながら、遺言書を作成することの大切さとともに、ご自身で気持ちを伝えることの大切さもご説明するようにしています。

 

 

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