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【vol.37】笑顔相続は、家族会議から!

相続診断士の皆様、こんにちは。司法書士@日本橋人形町の柿沼大輔と申します。私が体験した笑顔相続の事例をご紹介します。

 

事例

 

登場人物は、2年前に亡くなった父、母(79歳)、長男(58歳)、長女(56歳)です。

長男には前妻との間にA(33歳)及びB(28歳)の息子がおり、Xさん(35歳)と再婚しています。長女も結婚しており、  C(32歳)及びD(30歳)の娘がいます。

 

この家族の問題点は、母、長男、Xさんの3人で同居をしているのですが、後妻であるXさんと他の家族との折り合いが悪いことです。

 

Xさんは、母とはほとんど口を聞かず、母の様子を見に来た長女を無視し、AとBに至っては些細な出来事をきっかけに出入り禁止を宣告している状態でした。そして、同居の家が建っている土地は母が持分3分の1、長男が持分3分の2の共有であり、建物は長男の所有となっています。

 

この経緯を確認したところ、2年前に亡くなった父の相続手続の際に、将来的には、この土地と建物を長男へ、長男からAに引き継いでもらいたいという一族の意向があり、その意向に沿いつつ、2次相続対策も踏まえて、このように分けたことがわかりました。

 

そこで気がかりなのが、後妻のXさんの存在です。

母に万が一のことがあったときに、一族の意向どおり長男に母の持分3分の1を相続させた場合、長男死亡時にXさんが長男の財産の半分を相続する権利が発生するため、すんなりAがこの土地と建物を相続できるのか、Xさんとの関係が良くないためとても心配されていました。加えて、長男はすでに公正証書遺言を作っているとの話もありました。

 

私に相談した時の母の気持ちは、「土地はAへ、それ以外の全財産は長女へ、墓守はA、Xさんはうちのお墓には入れないで。」というもので、その内容の遺言書作成の依頼でした。この内容の遺言書を作ったら、おそらく、母が亡くなった後、この家には誰も寄り付かないでしょう。

 

もろもろお話を聞いた後に、私から、長男やXさんの立場になって考えてみませんか、と提案しました。

彼らも母、長女、A及びBとの関係がぎくしゃくしていることで、つらい思いをしているのではないか、皆さんに財産目当てで結婚したという視線を浴びながら生活していたら心を閉ざしたくなる気持ちがでてくるのではないか。母の気持ち通りの遺言書の作成のお手伝いをすることは簡単ですが、一度、家族で話し合ってみてはどうでしょうか、と私の考えを伝えました。

 

そして、2週間後、長男に、将来のことをどのように考えているのか確認するため、家族会議の場を設けてもらいました。

 

母から「長男も母たちとXさんの板挟みでいろいろと大変だと思うけれど、大切なことなので、私の想いを伝えます。私たち夫婦の想いは、この土地と建物を長男、Aへと引き継いで欲しいと考え、そのように進めてきましたが、あなたはどう考えていますか。長男が自分で築いた財産をXさんに相続させることは構わないけれど、一族の財産はAやBに引き継いで欲しい、というのが私たち夫婦の想いです。」と長男に伝えました。

 

長男からは、「なんで、今になってこんなこと聞くの?」と返答がありました。

母は、「正直、ずっと気になっていました。このことを考えると、毎日つらいです。」と言いました。

 

細かい会話のやり取りはありましたが、最終的に、一族の財産をAやBに引き継ぐことに関しては、長男も理解してくれており、AやBの出入り禁止の解禁も含めて、Xさんにきちんと説明し了承を得ること、長男が既に作成した遺言書を一部修正することを約束してくれました。母からも、「あなたに相談して本当に良かった。」と言ってもらえてとても嬉しかったことを覚えています。

 

その後の長男の経過はきちんと見守らなければなりませんが、すぐに遺言書の作成に入らずに、母を中心に家族の想いをきちんとヒアリングできたからこそ、よい結果を導くことができたと感じています。

 

笑顔相続は、家族会議から!

 

 

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