相続診断協会は、相続診断士の認定発行・教育・サポートを行っている機関です。

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【vol.27】広げましょう、笑顔相続

相続診断士の皆さま、こんにちは。
賴法律事務所の弁護士賴政忠(らいまさただ)です。

 

民法882条には「相続は、死亡によって開始する。」と規定されています。当たり前のことなのですが、「相続」には人の「死」が必然的に関わってくるのです。つまり、相続問題には、財産の分配という権利の側面だけでなく、人の死に伴う、感情の側面が必ず生じるのです。
相続トラブルが発生すると、弁護士が必要的に関わることになりますが、私は、生前に準備しておくことで、感情面から起こるいわゆる「争族」を避け、残された人たちが故人を偲んで「笑顔相続」を迎えることができると考えております。そこで当事務所では、相続発生後のトラブルの解決はもちろんですが、遺言の作成等の生前の準備にも、日ごろから注力しています。

 

相続診断士の方々とは、関西相続診断士会を通じて情報交換をさせていただいておりますが、多くの人とつながっている相続診断士の皆さまが、パートナー士業とタッグを組むことで、笑顔相続が広がることを願っています。

 

 

事例

 

数年前のことになりますが、心に残っている事案があります。

 

「余命数ヵ月と医師から宣告された兄が遺言を作成したいと言っているが、どうすればよいですか」

と、その妹さんが相談に来られたのが最初でした。実際は、数ヵ月後ではなく、11日後にお亡くなりになったのですが。

時系列で整理すると、以下のとおりです。

 

①1日目(最初のご相談)(木) 
妹さんが最初に相談に来られ、概要を伺い、翌火曜日に病院でご相談者と会う予定となる。

 

②6日目(①の5日後)(火) 
病院でご相談者と面談し、公正証書遺言作成の依頼を受ける。同日、妹さんに必要書類の収集を指示し、公証人に連絡し、10日後(16日目)の遺言作成の日程調整を行う。夕方、妹さんが必要書類を事務所に持参。

 

③6日目(火) 
夜遅く、妹さんから、ご相談者の様態が急変したとの連絡が入る。

 

④7日目(②③の翌日)(水) 
早朝、病院でご相談者と面談。かなり病状が悪化していることを確認する。すぐに、公証人に連絡をとり、無理を言って、2日後の金曜日午前に遺言作成の日程を前倒ししてもらう。

 

⑤9日目(金) 
午前10時から病院で公証人によって公正証書遺言を作成する。

 

⑥12日目(月) 
ご相談者永眠。

 

②の面談の中で伺った事情として、ご相談者には、同居する成人した子が3人と、20年近く別居している妻がいるとのことでした。そして、ご相談者は、すべての財産を子らに等分に残すという遺言を作成したいとのことでした。私が、遺留分について説明をしたところ、しばらく考えた後、次のようにお話になりました。妻には財産は残さないが生命保険等別の形で思いを残しているので、妻には遺留分を主張しないでほしいことを、自分が亡くなったら妻に伝えてほしいとのことでした。

私は、ご相談者の言葉を、妻に伝えました。結果として、妻は遺留分を主張しませんでした。ご相談者の思いが通じたのだと私は感じました。

 

実際の事案はもう少し複雑だったのですが、この事案を通じて、思いを伝えることの重要さを実感させられるとともに、(④の時点で、ご相談者に会いに行く時間があったこと、公証人が日程調整に応じてくれたこと、等、様々な要因がいい方向に働いたとはいえ)弁護士として常に真剣に事案に向き合うことの大切さを痛感させられました。また、④の時点で危急時遺言に切り替えるべきだったかもしれず、状況に応じた的確な判断の重要性を改めて感じた事案でした。

 

 

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