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【vol.18】「争続」を「笑顔相続」に導く「付言」

相続診断士の皆様,相続診断協会パートナーの熊本リバティ法律事務所弁護士北島武典と申します。当事務所は熊本市中心部にあり,主に相続や離婚等家事事件を担当しております。先日,落語家の桂ひな太郎師匠をお招きした相続落語セミナーに出演させていただきました。今後も協会パートナーの一員として積極的に活動していきたいと考えております。よろしくお願い致します。

 

≪事例≫

さて,今回は,私が関与した相続事例の中から,「付言」により兄弟の争いを避けることができた事例をご紹介致します。
この事例は二人兄弟のうち弟さんからの相談でした。ご兄弟には高齢のお父様がおられ,お父様が保有する土地と建物及び預貯金について,お父様が遺言書の作成をしておきたいということでした。お父様の希望をお聞きしたところ,土地と建物は兄弟共有(弟4分の3,兄4分の1)にし,預貯金他不動産以外の一切の財産を弟に相続させるということでした。私はお父様の希望どおりの案を作成しました(今であれば共有としないようお父様に助言しますが)。
 その後お父様が亡くなられましたが,再度弟さんから私に相談がありました。ご兄弟で話し合いをした結果,不動産については更地にして売却することになったが,お兄さんが,遺産の預貯金の中から現金を要求し,要求が叶わなければ不動産の売却に同意しないと主張しているとのことでした。
 そこで,私は,お兄さんに対し,遺言書では預貯金は弟さんが取得することになっていることと説明をし,不動産の売却については是非同意してほしいとお伝えしました。これに対し,お兄さんから次のような回答がありました。お父様のお葬式の際に,お父様が生前お兄さんに金銭を用意していると言っていたことを思い出し弟さんにそのことを伝えたところ,遺言書の存在を知り諦めたこと,ところが,弟さんから,遺産からいくらかの金銭を渡すと言ってきたこと,しかし時間が経つと,遺言書のとおり渡さないと言ってきたこと,その後も態度が曖昧だったこと,そこで,お兄さんとしては不動産の売却前にきちんと兄弟で話合いをしたいとのみ伝えたということでした。おそらく,お兄さんとしては,なぜ自分には不動産の共有持分が弟より少なく,また自分には預貯金が残されなかったのかという思いが根本にあり,弟さんの曖昧な態度や事実誤認に我慢ができなかったと考えられました。こうしたちょっとしたきっかけから兄弟の相続争いに発展することも十分ありえた事案でした。

 

ところが,実は遺言書には,次の内容の付言が残されていました。「次男とその妻には私と私の妻の面倒を見てもらい感謝している。面倒を見てくれた苦労に報いるため次男に4分の3を相続させることにし,葬儀や法要などの祭祀を次男にお願いしたいので,預貯金を次男に相続させる」「兄弟仲良くするように」
 お兄さんは,私宛の回答書に次のとおり記しました。「以上のような事実誤認はありますが,父親は生前から兄弟仲良くしろと言っておりましたので,私としては,これ以上争うことは亡き父の真意ではないと思いますので,弟の思うように行って構いません。」その後,ご兄弟は仲良く過ごされているようです。
 

 

 

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