相続診断協会は、相続診断士の認定発行・教育・サポートを行っている機関です。

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【vol.138】間に合った遺言書

1.はじめに

はじめまして。住友泰輔税理士事務所の住友と申します。
大阪市北区、南森町に事務所を構えております。法人顧問業務を軸に、相続・事業承継・組織再編・非上場株式の評価などを強みとしています。
相続については、申告だけでなく、二次相続まで見据えたシミュレーションと生前対策のご提案を大切にしています。

2.事例紹介

■病床からの、遺言のご相談
知り合いの司法書士先生から、遺言を書くための相続シミュレーションのご依頼をいただきました。
内容を伺うと、遺言者の方は、ご病気で病床についておられるとのことでした。私は、財産の内容をおうかがいして、相続税がいくらかかるかの試算をお出ししました。
ポイントになったのは「二次相続」です。相続は一度では終わりません。
ご主人が亡くなったときの相続(一次相続)の後に、いずれ奥様が亡くなったときの相続(二次相続)がやってきます。
遺言者の方の当初のお考えでは、財産の約半分を奥様に渡す予定でした。奥様が相続する分には配偶者の税額軽減があるため、一次相続だけを見れば、奥様に多く渡すほど税金は少なくて済みます。
ただ、そうすると、いずれ来る二次相続のときに、お子様たちに重い税金がかかってしまいます。
そこで、奥様の生活に必要な財産はきちんと確保したうえで、預貯金はお子様たちに多めに渡す分け方をご提案しました。二回の相続をあわせて、税金が約800万円軽くなる計算でした。
■遺言書を書き上げた、その翌日に
ご本人はこの内容に納得され、安心されたご様子で、ご自分の手で遺言書を書き上げられました。
そして、その翌日に、息を引き取られました。遺言書を書き終えるまで、一生懸命生きてくださったのだと、今でも思います。
■同じ分け方でも、意味がまったく違う
この「税金が軽くなる分け方」だけであれば、遺言書がなくても、相続が起きたあとのご家族の遺産分割協議で実現できるかもしれません。
それでも私は、この遺言書には大きな意味があったと思っています。ご本人が内容を理解し、納得して、ご自分の意思で決められたことです。
ご本人は「これで家族は大丈夫だ」と安心して旅立たれました。
ご家族にとっても、「お父さんが家族のことを考えて決めてくれた分け方」になりました。
同じ分け方でも、受け取る側の気持ちはまったく違います。実際、ご家族は遺言のとおりに、もめることなく手続きを終えられました。
■「まだ早い」ではなく「書けるうちにしか書けない」
相続をきっかけに、仲の良かったご家族がもめてしまうことは、残念ながら珍しくありません。
けれど相続は、家族への最後の思いやりを伝える機会にもなり得ます。
そのどちらになるかは、亡くなってからの話し合いではなく、元気なうちの準備で決まります。
この方は間に合いました。ただ、本当にぎりぎりの、たった一日の差でした。
遺言書は、財産を分けるだけの書類ではありません。ご本人の気持ちを形にして、家族に手渡すためのものです。
そして、「まだ早い」ものではなく、「書けるうちにしか書けない」ものでもあります。
ご家族の笑顔のために、元気な今のうちに、最初の一歩を踏み出していただけたらと思います。

3.相続診断士の皆さまへ

今回の事例で一番お伝えしたかったのは、「相続の後からでも作れる分け方」「生前にご本人が決めた分け方」は、中身が同じでもまったくの別物だ、ということです。
税負担を抑える分け方そのものは、相続が起きた後の遺産分割協議でも作れます。けれど、ご本人の納得と安心、そしてご家族の「決めてもらえた」という気持ちは、生前にしか作れません。
だからこそ、お客様の「うちはまだ早い」という言葉に、どうか引き下がらないでください。
ご家族からは切り出しにくい遺言の話を、第三者の立場で自然に切り出せるのは、相続診断士の大きな強みです。
そして、税額のシミュレーションや遺言の方式選びといった具体的な段階に入ったら、税理士や司法書士などの専門家へ早めにつないでいただければと思います。
この事例も、司法書士の先生からのご紹介で始まりました。この連携のスピードが、今回のような「ぎりぎり一日」を間に合わせます。
もう一点、分け方のご相談を受けたときは、「二次相続まで見るとどうなるか」という視点をぜひ持ってみてください。
一次相続だけを見た場合と、二次相続まで見た場合とでは、答えが変わることが少なくありません。その視点があるだけで、お客様にお伝えできることが確実に増えます。


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