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【vol.13】聞く力と相続診断士 2

相続という言葉には、大きく2つの要素が含まれていると思います。
それは何かというと、量と質です。

自分たちが相続という仕事を請け負う際には、どうしても量の話が中心になります。
つまり、土地の評価がどうなるとか、税額がどうなるのかという話です。
例えば小規模宅地の課税の特例を例にとると、
税理士が進めていくべき方向は、ズバリ、評価が一番下がる相続をしてもらうこと。
より具体的には、自宅を自宅として継続利用してもらえるような相続人にそれを相続してもらうよう話を進めます。これはこれで、多分、間違ってはいませんし、なるべく、相続税を減らしてあげるという意味で、税理士の役割も十分果たされていると思います。

しかし、ここには質的要素が含まれていません。
では、質的要素とは何か? それは、簡単に言えば、「人の気持ち」です。

こんな話がありました。
弊社で事業承継対策を実施させてもらっているお宅の話です。
先代(ご存命で現会長)が堅実経営を続けてこられたため、今も業績は好調。したがって株価もかなり高い。そして、そうであるがゆえに、個人資産も潤沢。相続予定者は、奥さん、長男、長女(既に嫁いでいる)の3人。

会長からのご依頼で、仕事はスタートしました。税負担をかなり減額し、かつ、事業を円滑に承継してもらえるような対策を立案することが主な仕事でしたが、既に嫁いでいる長女への配慮もしながらの対策でしたので、会長からはかなり評価をもらえた内容でした。
その後、各対策案の実行に移っていきましたが、そこで初めて、奥様と話をする機会を得ました。その後数回、お話する機会を得、いろいろな話をさせて頂きました。詳しい話しはここでは出来ませんが、そういった機会を経ることで、結果的に対策案は修正されることになりました。

なぜ、そうなったのか?

それは、自分が聞いたつもりになっていたからです。この奥様は、いわゆる古いタイプの方で、一歩さがり、ご主人にあまり自分の考えを言う人ではありません。確かに依頼者は会長で、会長を通じ、奥様の意向も確認していたつもりでしたが、そこがまさに「つもり」でした。

前回も書きましたが、人間は大脳が発達しているゆえに、なかなか、本音を出しません。加えて、古い方ほど奥ゆかしい人が多いため、一定の人間関係の確立とうまく聞いてあげないと本音が出てきません。時には、聞いてはいけないようなビックリするような話も出てきますが、そういう話が出てきてはじめて、相続の「質」の部分が埋まります。

今回は、自分の「つもり」が解消され、ご家族にとっても結果的には良かったのですが、自分自身にとっても、聞くことの重要性の再確認と多くの学びを得る機会となりました。

(再掲)
ここで言う「聞く力」とは、テクニックではありません。聞く力とは、相手が安心して、気持ちよく話ができるような雰囲気を自然に創りながら、適切な質問ができる能力を言います。これは正直、簡単なことではありません。しかし、この力を身にまとえば、成果は間違いなく上がりますし、何よりも、人様のお役に立てるはずです。

ありがとうございました。

 

 

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