【vol.121】「士業+相続診断士のすゝめ」

1.はじめに
初めまして。私は佐賀県の司法書士の姉川智子(あねがわさとこ)と申します。
司法書士歴は12年を超え、ようやく中堅の領域に差し掛かったところかなというところですが、相続手続きに取り組むためには、司法書士の業務範囲内の知識だけでは限界を感じる出来事があったため、相続診断士の資格を取得しました。
2.せっかく頼っていただいたのに…
その出来事とは、数年前に相続登記のご依頼で出会ったM様との出会いでした。
M様の相続手続きは相続放棄や限定承認が絡む複雑な事案でしたので、弁護士が入っており、私はその弁護士から紹介を受けて相続登記を担当するという形で本件に関わりました。
こういった場合、進行のイニシアチブを取るのは主に弁護士なので、私は相続登記に必要な範囲でのみM様と関わる、というスタンスでした。
けれども、M様と対面して相続登記の手続きについて案内している際に、M様がポツリポツリと、ご自身がガンサバイバーであること、お母様と一緒に不動産を相続したけれど、お母様より先にご自身が他界したときはどうなるのだろう、との不安なお気持ちをお話ししてくださりました。
それを聞いて私は、不動産の権利関係がどうなるのかといったことくらいしか回答できませんでしたが、M様のご不安はきっとそれだけではないだろうと感じていました。本件に主として関わってきた弁護士ではなく、私にお気持ちを吐露していただいたということは、私に対して、何かしらの信頼を寄せてくださっていたのだろうと思うと嬉しかったのですが、同時にM様のご不安に対して何もできない自分を悔しく思いました。
その思いを数年抱えていたところ、相続診断士の存在を知り、「これならあの時できなかったアドバイスができるかもしれない」と資格を取得することを決めました。
3.士業+相続診断士のすゝめ
資格を取得することで相続手続きについての幅広い知識を身につけることができたのはもちろんのことですが、各相続診断士会等での交流や勉強会を通じて、相続手続きに携わる各業界の方々と知り合うことができました。
「相続手続きはチームプレイが重要」と言われているとおり、私一人がいくら頑張っても達成できない領域はあり、そういう場合は仲間を頼ってもいいのだという視点を得ることができました。
我々士業はつい、自分で何でもやってしまおうという気質の人間が多いため、依頼者の真の目的達成のためにも「仲間と取り組む」という気付きを与えてくれた相続診断士という資格とそれを取り巻く環境に大きな可能性を感じています。
相続案件を扱うことのできる士業の方々には、ぜひ、士業の資格にプラスして相続診断士の資格を取得されることをお勧めいたします。きっと新しい可能性を見出していただけると思います。
4.おわりに
先述したM様のその後ですが、治療が成功しお元気になられたようで、昨年お母様をお看取りされた後、相続登記のご依頼のためまた私にご連絡をいただきました。
「あの時良くしていただいたから。」と、私自身は力不足を感じていたのにそのようにお言葉をかけてくださって、胸にこみあげるものがありました。
今度は、不動産の名義変更にとどまらず、相続手続きの幅広い知識を提供することができて、M様のご家族にも「自分に何かあったら姉川先生を頼って」と伝えてくださっているそうです。
司法書士の資格だけでは届けきれなかった安心と満足感をいくらかでもお届けすることができるように、これからも私は「司法書士+相続診断士」として邁進してまいります。最後までお読みいただき、ありがとうございました。