相続診断協会は、相続診断士の認定発行・教育・サポートを行っている機関です。

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【vol.107】「なぜ相続診断士になったのか」

皆様、初めまして。神奈川県相模原市の行政書士 遠藤と申します。
私が「相続診断士」になろうと思ったきっかけになったエピソードをご紹介します。

80歳代の老夫婦世帯のご家庭でした。息子が2人いましたが、各々独立して長男は市内に、次男は近隣市に所帯を持ってそれぞれ暮らしていました。
身体が動くうちはと老夫婦二人で近隣市において中華料理店を営んでいたのですが、70歳になるのを機に体力の限界を感じ、現役を引退しました。その後、店は売却し、実家で二人で暮らしていました。
ある豪雪の降った翌日、ご主人は早朝、雪が止んだのを確認すると、実家前の雪かきをしたそうです。お昼ごろになってようやく雪かき作業が落ち着いたので、2階の寝室で「疲れたから」と言って、横になったそうです。
奥さんも特に気にはせずに、1階にてTV等を見て過ごしていました。夕方になり、夕食の支度をしようと2階にご主人の様子を見に行ったとき、異変に気が付きました。いくら声を掛けてもまったく動かない。
市内に住む長男に電話し、大至急来るように連絡をしましたが、前日の大雪で交通網はストップ。救急車の手配をしましたが、大雪で道路が塞がれ、家の前まで来られません。100mほど手前の通りから雪をかき分け救命士の方が来てくれたそうです。
奥さんは救急車に同乗し、市内の大学病院へ搬送されました。長男が着いた時には、もう帰らぬ人となっていました。その夜は病院の霊安室でいっしょに過ごしました。自宅で亡くなったので、司法警察員による検視が行われました。

自宅に戻ってからが大変でした。葬儀の手配、親類縁者への連絡、死亡届等の官公庁への届け出等、期限が決められている手続きが山ほどありました。80歳代の高齢者一人では、到底できないことばかりです。
幸い長男が地元の市役所で戸籍・住民記録/年金・国保加入脱退担当をしていたこともあり、官公庁への手続きはスムーズに済みましたが、一般人ではそうはいかないと思います。
相続に関しても、「お父さんと長年暮らした実家で今後も暮らしたい」という希望もあり、実家の土地、建物、その他預貯金など老後資金のために、すべて奥さんが相続すると言うことで、特に問題なく相続手続きが終わりました。
相続登記も以前に市役所の資産税課にいて、登記所にも仕事で頻繁に出入りしていたことがある長男が自身で勉強して、手続きを行ったそうです。

奥さんは、配偶者の突然死もあり、一人での自宅での生活が困難になり、当時、市介護保険課に勤務していた長男がすべての手続きを行い、介護サービスを利用して、通所介護、訪問介護、宅配サービス等を受けるようになりました。
しかし、配偶者失った悲しみのダメージからか、被害妄想、幻覚症状、徘徊等の認知症を発症。そして以前発症した脳梗塞が再発。病院での入院、治療、手術、リハビリの生活になってしまいました。退院後もリハビリ病院へ転院し、最終的には介護施設に入所することになりました。
この間、およそ10カ月。目まぐるしく変わる奥さんの病態。病院や施設等から頻繁に呼び出しの電話が仕事中にもありました。どれも緊急性を要するものばかりで、家族以外は判断のできないことばかりです。
そして奥さんもご主人が他界されてから282日後にこの世を去りました。

長男夫婦がお孫さん(0歳)といっしょに介護施設にその間、たびたび訪問していました。
亡くなる前日に訪問すると、
「もう私のことは心配しなくていいよ。大変だから明日から来なくて良いからね。」
と言った言葉は、
「明日はあの世からのお迎えが来て、お父さんとまたいっしょに暮らすから心配いらないよ。これからは孫の世話をしてあげてください。」
というメッセージだったと感じられたのは、葬儀も終わり、相続のごたごたがすっかり片付いた約1年後のことでした。

一次相続では特にトラブル等がなかった弟さんとは、今回の二次相続ではいろいろと相続割合の件で揉めました。
・兄は大学(4年制)まで親の支援で行かせてもらって、自分は専門学校(2年)しか行かせて貰っていない。
・親の家業の手伝いをして、親の遺産の貢献をした。
・家業の手伝いをしている間、家族従業員ということで低賃金しかもらっていない。
自分の妻(嫁)も両親といっしょに低賃金で働いていた。
・親といっしょに働いたことで、家業を継続することができていた。
・親(父)が引退後は、自分が店(中華料理店)を引き継ぐ話だったが、それも自分に相談なしに売却してしまい、それを相続することができなくなった。
等、最初はお兄さんの提示案で納得していたお弟さんもお嫁さんの意見で、様々な要求をしてくるようになりました。

最終的には、実家の土地・建物の売却費用(登記費用、遺品整理/片付け費用、測量費用、解体費用等)、売れるまでの維持費、税金、公共料金、墓地の管理費、法要費等を差し引いた金額を積算し、その分をマイナスする形で相続割合を決めて、解決を図った訳ですが、それ以来、裁判にはならなかったものの、弟さんとの関係は壊れ、一切付き合いも無くなってしまいました。

以上、我が家の相続に関する事例をご紹介しました。

相続税も掛からないような少額の遺産でも、紛争が起き、お互い嫌な想いをし、最終的には兄弟間は絶交状態となる。最悪なシナリオですが、
相続診断協会でたびたび例示されている事例をまさにリアルで体験していました。
「子の世話にはなるまい、負担になってはいけない」と体力の限界まで働き続けた両親。
「幼い孫の行く末を案じる想い」
「兄弟仲良く暮らして欲しい。」
との両親の希望・期待に答えることが果たしてできたのだろうか?
また、
「このような相続人が2人以上のケースは、全国にたくさんあるのではないか?」
「同じような辛い想いをしている人たちのお手伝いがしたい。」
「笑顔で住み続けられる社会を作りたい。」
このような想いから31年3ヵ月務めた公務員を早期退職し、まずは行政書類作成のプロである「行政書士」に登録。相続/遺言の専門塾で「遺産分割協議書」や「遺言書」作成のいろはを学び、「相続法務指導員」に認定。更に相続専門の士業として多くの人のお役に立てればと考え、「相続診断士」になりました。
自身も「多くの人との出会いで成長できる。」と確信し、
「一般社団法人相続診断協会」パートナー事務所にも登録させていただきました。
100人いれば100通りの相続があります。常に最善の方策を依頼者とともに考え、笑顔で過ごせる社会作りに貢献したいと考えています。
今回のケースで最終的には、兄弟合意の上で、相続割合の算定をしましたが、その過程でのごたごたで、兄弟間の関係は修復不能になってしまいました。お互いが言い争わないような状況を創るのが、相続診断士の役割と考えます。
これからも皆さんと一緒に相続問題に取り組んでいきたいと思います。

 

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