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【vol.53】家族信託制度の活用事例

相続診断士の皆様、はじめまして。

新人パートナーの行政書士の村田光広と申します。
埼玉で開業していたのですが、二年前に親の介護の為、実家である北海道北見市(カーリングで有名になった)に帰り、相続及び家族信託を業務の中心として行っております。

今回初めてコラムを担当させていただきます。

最近少しずつ認知度が上がってきた家族信託という比較的新しい法スキームを使い依頼人さんの問題解決をした事例をご紹介します。
(注 一部個人情報について変更しています)

事例

依頼人さんは50代の男性(次男さん)とそのお父さん80代で、御高齢ですが今のところ心身ともに健康で、自分が認知症になった場合や、相続が発生した場合に備えたいとの要望でした。(お母さんは既に他界、推定相続人は兄弟二人のみ)

また大きな問題としてご家族の一人である長男さんとは音信不通で行方もまったく分からないで数十年交流もない状態が続いています。

お父さんの資産としては、一人で住んでいる実家の土地、建物と多少の預金と年金くらい。
(次男さんはお父さんとは別居していますが毎日様子は確認しています)

お父さんが病気になり長期の入院や、高額の手術費用、専門施設への入居費用などが発生した場合、次男さん自身の資産では対応が不可能で、お父さんの資産で賄うしかないのですが、その資産が主に不動産であることから費用の捻出はなかなか大変そうである推察されました。

当然不動産の名義はお父さんである為、仮に売却して必要な費用を作ろうとしても、病気や認知症の為本人の意思確認が出来ない場合は無理です。

かりに成年後見制度を利用した場合、お父さんの判断能力が低下してからの利用となるため、実家の売却の必要があるときには手続き完了まで時間がかなりかかり、後見人が選任されるまで口座が凍結されるなど不便になってしまう可能性があります。

また、元気なうちにそのような事に備えて長年住んでいる実家を売却しておき、次男さんの家に同居するとの提案も次男さんからありましたが、お父さんの心情として受け入れがたいとのことでした。

予め次男さんに贈与しておきいざというときに売却するとの方法も考えましたが、贈与税等の負担が大きいので選択出来ませんでした。

そして、もし相続が発生したら相続人の一人である長男の行方不明であることから、しばらくは資産が凍結され、その処分には不在者の財産管理人の選任等など解決するには、かなりの費用と時間がかかると思われます。
(勿論遺言の活用も考えましたが今回の案件では生前の認知症対策も同時考えなければならないので利用しませんでした)

お父さんが元気なうちは住み慣れた実家で生活し、病気や認知症になり本人の意思確認がとれなくなったとしても実家を売却等などして専門の施設を利用できるようなり、かつ相続が発生しても当該不動産が次男にスムースに移転できる方法としては、家族信託を使うのがベストだと考え実行させてもらいました。

 

家族信託を活用

お父さんを委託者兼受益者、弟さんを受託者として信託契約を結び、これより不動産を受託者である弟さん名義へ移転登記かつ信託登記を入れますが、あくまで実質的にはお父さんのモノなので元気なうちはお父さんがそこで生活をし、もし必要ならば売却等して費用を捻出できるようになり、預金についても信託口口座(委託者兼受益者お父さん受託者弟さん受託口口座名義)を開設し認知症等になっても口座を凍結の危険から回避しておき、いつでもその口座をお父さんのために利用出来、相続が発生してもお兄さんの問題とは関係なく弟さんに遅滞なく当該不動産が引き継がれるようにしました。

依頼人であるお二人にはこんな方法があったのかとの驚きと感謝を受け、とても満足していただきました。

 

最近やっと、テレビなどで放送され少しずつ家族信託というものが、成年後見、遺言、生命保険等とは別の、新たな相続、財産管理の問題解決の方法の一つとして広がってきています

相続診断士の皆様にも、依頼人さんに対する提案の一つとして家族信託を利用していただければ幸いです。

 

 

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