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【vol.93】相続Q&A~遺言執行者は、遺留分のない法定相続人にも財産目録を交付しなければならないのでしょうか?~

質問

仲のよかった叔母が亡くなりました。叔母は独身で子供がおらず、法定相続人は兄弟姉妹3人のほか、甥・姪が私を入れて計7名います。
叔母は公正証書遺言を残しており、財産の大半を姪である私に遺贈し、残りは慈善団体に寄付するという内容です。また、私が遺言執行者に指定されています。
私としては、遺言書がこういう内容なので、遺産として何がどの程度あるかなどを他の法定相続人に知られたくないですし、兄弟姉妹やその代襲相続人には「遺留分」がないので知らせる必要もないと思っています。
このような考え方は間違っているのでしょうか。

回答

民法第1011条第1項では、「遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない」と規定されています。
それでは、ここでいう「相続人」には「遺留分のない法定相続人」が含まれるのでしょうか。
この点に関しては、裁判例(東京地方裁判所平成19年12月3日判決)があります。
簡単にいうと、「同条項では、相続人が遺留分を有するか否かによって特に区別が設けられているわけではない」という理由で、「遺言執行者は、遺留分のない法定相続人に対しても、遅滞なく被相続人に関する遺産目録を作成して交付すべき義務がある」と判断されています。
なんだか硬直的な解釈で、遺言執行者にとっては「何のために知らせるの?」という疑問が湧きますし、遺産目録を交付された遺留分のない法定相続人の方でも「いったい、どうしろと言うんだ?」と戸惑ってしまいそうですね。
そうはいっても、民法第1011条第1項と上記裁判例がある以上、遺留分のない法定相続人に対する遺産目録の交付を怠ると「任務を怠った」ということになり、遺言執行者の解任事由(民法第1019条第1項)にも該当することになりかねませんので、気をつけましょう。

教訓

民法改正により、遺言執行者は「相続人の代理人とみなす」(民法第1015条)とされ、法に則って公正に任務を果たすことが求められています。自分にとって都合のよい考えで行動するのではなく、専門家に尋ねたりして、ミスのないよう慎重に行動しましょう。


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