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【vol.101】相続Q&A~特別受益の額が遺産よりも多いとどうなる?~

質問

母が亡くなり、相続人は私(兄)と妹の2人だけです。
遺産を調べたら預貯金が約300万円でした。
ところが通帳の記載から、5年前に母が妹にマイホーム資金として500万円を贈与していたことがわかりました。
この場合、私は遺産分割でいくらもらえるのでしょうか。

回答

300万円

「あれ? 400万円もらえるのでは?」と思った方も多いのではないでしょうか。
確かに、遺産である300万円に特別受益500万円を持ち戻すと合計800万円です。
そうすると、相談者である兄は800万円の2分の1の400万円をもらえそうにも思えますが・・・

民法903条2項では「遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。」と定められています。
これは贈与を受けた者の側から見た定め方をされているのですが、本件に当てはめて見てみると、
妹への「贈与の価格」→500万円

妹の「相続分の価額」→300万円×1/2=150万円
を「超えるとき」に当たります。
そして、その効果として
妹は「その相続分を受けることができない」→ 遺産からは何ももらえない
つまり、遺産300万円は全て兄のものになります。
ここまでは誰でも納得がいくのではないでしょうか。

では、それ以上に妹が兄に贈与金の一部を返還しなければならないかというと、そのような定めは法律上ありません(生前贈与自体は適法な行為なので「不当利得」にも当たりません)。
このことを法律用語では「受贈者は超過特別受益を返還する必要はない」などということもあります。

教訓

特別受益の持ち戻しというのは、あくまで「今ある遺産を分ける場合の調整の材料」であって、生前贈与を全くなかったことにする制度ではありません。
時々、「相続の時に返せといわれたらどうしよう」と心配している受贈者もいますが、そのようなことは起こらないのです。他の相続人にとっては、遺産のうち受贈者の相続分を上限とした是正しか望めないという結果になり、不公平感が残ってしまうかもしれません。
相続の時にどのような効果が生じるか、正しい知識を持って生前対策をしておきましょう。


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