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【vol.115】相続Q&A~死亡保険金と特別受益~

質問

相続人の1人を死亡保険金の受取人にしようと思います。
あまり多額だと特別受益として持ち戻しの対象になってしまうと聞きましたが、いくらまでならOKですか?

回答

1 死亡保険金は、原則として民法903条の特別受益の対象には該当しません。

しかし、最高裁によって「受取人とその他の相続人との間に生じる不公平が法の趣旨に照らして是認することができないほど著しいといえるような『特段の事情』がある場合には、民法903条の類推適用により持ち戻しの対象となる」という考え方が採用されています(平成16年10月29日最高裁第二小法廷決定)。
要するに「大きな不公平」となる場合には「例外的に遺産の中に持ち戻しましょう」ということです。
「大きな不公平」があるかどうかは、次の要素を総合的に判断されます。
① 保険金の額
② 保険金額の遺産の総額に対する比率
③ 受取人及び他の相続人と被相続人との関係
④ 各相続人の生活実態
⑤ その他の諸事情

2 判例の状況 ※「遺産総額」には死亡保険金額を含まない。

【特別受益に「当たらない」(持ち戻しゼロ)とした主な判例】
① 上記最高裁判例(保険金比率9.6%)
死亡保険金額574万円 遺産総額5958万円
② 令和4年2月25日広島高裁決定(保険金比率457%)
死亡保険金額2100万円 遺産総額459万円

【特別受益に「当たる」(全額持ち戻し)とした主な判例】
① 平成17年10月27日東京高裁決定(保険金比率99%)
死亡保険金額1億0129万円 遺産総額1億0134万円
② 平成18年3月27日名古屋高裁決定(保険金比率61%)
死亡保険金額5154万円 遺産総額8423万円

教訓

判例の状況を見ても、単に遺産総額に対する保険金比率だけで決まるものではなく、「受取人及び他の相続人と被相続人との関係」(上記1③)「各相続人の生活実態」(上記1④)も踏まえて実質的に「大きな不公平」があるかどうかが判断されています。
つまり、単に「いくらまでならOK」という観点だけではないということです。
また、特定の相続人が多額の保険金受取人になったからといって、そもそもその保険金額を他の相続人に開示する義務はありませんし、他の相続人から必ず争われるとは限りません。
相続コンサルタントの保険パーソンとしては、あまり固定観念にとらわれずにお客様のニーズに合った保険加入を勧めることが肝要です。


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