【vol.7】相続Q&A~相続人の中に行方不明者がいる~【難易度】難~
回答
まずは,姉の息子A(50歳)が生きているのか、死んでいるのかを戸籍謄本や住民票を集めて調査します。戸籍上死亡が確認できず,かつ,連絡がどうしてもつかない場合には、不在者財産管理人の選任を申し立てるか、失踪宣告の請求を家庭裁判所に行うことになります。
解説
1 相続人が行方不明である場合
まずは、相続人の確定のため、戸籍謄本を集めます。そこで、Aが既に死亡している場合には、戸籍に死亡の旨が記載されていますので,戸籍上の生死が判明します。この場合,姉より先にAが死亡していれば,姉の相続人は弟(相談者)となりますが,姉の死亡後にAが死亡していた場合には,姉の弟(相談者)は相続人とならないことに注意が必要です。 また、Aの住民票上の住所を調査し、その住所地に直接訪れるか、手紙を送るなどして捜索を行います。それでも、Aが行方不明であるときは、次の場合に応じて採るべき手続が異なってきます。
2 生きていることはわかっているが、どこにいるのかわからない場合
姉死亡時に、Aが生きていれば、Aは姉の相続の唯一の相続人となります。したがって,Aと連絡がつくまで,弟(相談者)は,姉の遺産を管理する必要がありますが,かなりの負担となりますので,弟(相談者)は姉の相続の利害関係人として、家庭裁判所へ不在者財産管理人の選任の申立てを行うことができます。そして,Aの不在者財産管理人に姉の遺産を渡し,その後は,不在者財産管理人がAの捜索等を行って,手続きを進めていきます。
3 生死不明の場合
Aの生死が不明の場合には、次順位の相続人等が利害関係人となって、家庭裁判所に請求することで失踪宣告を行うことができます。失踪宣告がされると、その者は死亡したものとみなされます。要件と効果は次のとおりです。
1)不在者の生死が7年間明らかでないとき → その期間が満了した時に死亡したものとみなされる
2)戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者、その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後、又はその他の危難が去った後1年間明らかでないとき → その危難が去った時に死亡したものとみなされる。
失踪宣告の効果によりAは死亡したものとみなされるため,その後の手続きを進めることができますが,この場合でも,Aが死亡したものとみなされた日が姉の死亡の先後で相続人が変わってしまう場合がありますので,注意が必要です。
教訓
相続人の中に行方不明者がいると事前に分かっている場合には,遺言書を作成しておくことを強くお勧めします。遺言書がなければ,下記のような煩雑な手続きを行う必要があるからです。
相続人が行方不明で連絡が取れない場合,遺産を管理している者や次順位の相続人は利害関係人として、他の相続人が生きているのか、死んでいるのかを調査するために、戸籍謄本や住民票を市区町村に請求することができます。
こちらの調査は、弁護士や司法書士に依頼するとよいでしょう。 行方不明の相続人が戸籍上死亡していることが確認できない場合には、状況によって、不在者財産管理人の選任を申し立てるか、失踪宣告の請求を家庭裁判所に行うことになります。 なお、失踪宣告の1)か2)により死亡したものとみなされる時期が異なります。
それにより、被相続人の相続人が変わってくる場合がありますので,注意してください。