【vol.132】“確認したつもり”が招いた相続トラブル ・・ 一見円満だった相続が急に揉めた理由
相続のご相談では、初回面談に相続人全員が揃うとは限りません。
一見、何の問題もなさそうに見える相続でも、「確認したつもり」「分かっているはず」という思い込みが、後に大きなトラブルへ発展することがあります。
今回の事例も、当初は非常に円満な雰囲気で始まりました。
被相続人であるお母様が亡くなられた時点での相続人は、長女A、二女B、そして既に亡くなっていた長男の子である甥C・Dの計4名でした。
お父様と長男は既に他界しており、お父様の先妻との間の子Eは相続人ではありませんが、A・Bとは良好な関係にありました。
初回面談に参加されたのは、長女A、二女B、相続人ではないE、そして長男の妻Fという顔ぶれでした。
本来の相続人である甥C・Dは同席していませんでしたが、全体として和やかな雰囲気で話し合いは進みました。
分割方法について確認すると、二女Bが代表相続人として手続きを主導する意向を示され、
「Eにも財産を分けたい」
「相続財産の一部を自治体へ寄付し、相続税の負担を軽減したい」
といった具体的な案が示されました。
やや強引な印象はあったものの、その場ではEも納得し、Fも「子どもたちは必ず納得させる」と話されていました。
この時点では、誰もが“合意できている”と感じていたのです。
約1か月後、私はBに対し、甥たちの意向も問題ないかを再確認したうえで、遺産分割協議書を作成・発送しました。
「本当に同意が得られているのであれば、実印の押印をもらってください」とお願いしました。
ところがその1週間後、突然、甥Cから私の事務所へ興奮した様子で電話が入りました。
「遺産を自治体に寄付するなんて、どうしても納得できない」
という強い訴えでした。
私は、事前にBから甥たちも了承していると聞いていたため、その前提で協議書を作成したこと、そして改めて話し合えばやり直しは可能であることを説明しました。
結果的に、遺産分割協議は再度行われ、自治体への寄付はA・Bがそれぞれ自己の財産から行う形で合意が成立しました。
大きな紛争には至らなかったものの、「確認したつもり」が原因で、相続人の感情が大きく揺れ動いた事例でした。
この経験から強く感じたのは、当事者本人から直接意思確認をしていない内容について、極端な分割案を盛り込むことの危うさです。
特に、寄付や特定の相続人に有利・不利となる内容については、相続人全員の十分な理解と納得が不可欠です。
相続診断士の皆さまには、
「本当にご本人の言葉ですか?」
「直接、意思を確認しましたか?」
この一言を惜しまず投げかけていただきたいと思います。
あの時、最初から甥たちの想いを丁寧に拾えていれば、より穏やかな“笑顔相続”に導けたかもしれません。
相続は書類を整える作業ではなく、人の感情を調整する仕事でもある・・そう改めて感じさせられた事例です。














