【vol.130】「専門家連携」の力
税理士として相続税申告に長く携わってきましたが、独立して間もない頃にご相談いただいた、若くしてご主人を亡くされた奥様の案件は今も印象に残っています。
相続人は奥様と未成年のお子様2人(10歳・8歳)でした。
弊社に相談に来られる前にいくつかの税理士事務所に相談に行かれていましたが「法定相続分どおりに分けるしかなく、配偶者は配偶者の税額軽減で守られるものの、お子様の取得分は未成年者控除では吸収しきれず、数百万円の納税が発生する」と説明されていました。私も当初は同様の見立てでしたが、司法書士の先生と協議を重ね、手続の設計を根本から見直しました。
具体的には、次の二点を軸に進めました。
・未成年者の法定代理人に被相続人のご兄弟に就いていただいたこと。
士業関係者が子の代理人となると、どうしても法定相続分を確保せざるを得ないケースが多いため、一般の方に就任いただきました。
・家庭裁判所へ陳述書を提出したこと。
法定相続分での分割案と、配偶者が多めに取得する案を並置し、いずれの配分でも実務上の管理・養育は奥様が担う一方、配分の違いによって税額が大きく変わる事実を丁寧に説明しました。
家庭裁判所の関与のもと、適法性と妥当性を確認しながら分割協議を整え、当初想定より大幅に納税負担を抑えて申告に至りました。
単に“節税のための配分”ではなく、未成年のお子様の生活・資金管理、将来の運用や名義の扱いまで視野に入れ、法務・税務・実務を一体で設計できたことが成果につながったと感じています。
この経験は、相続実務が「個人戦」ではなく「チーム戦」であることを改めて教えてくれました。
登記・遺産分割で司法書士、不動産の売却や価格妥当性で不動産業者、分筆等があれば土地家屋調査士――案件の局面ごとに適材適所の専門家が早期に関与するほど、判断の質は上がり、無用な納税や手戻りを避けられる。
私はそう実感しています。
その意味で、相続診断協会は多様なプロフェッショナルと出会える“接点の場”として機能していると思います。
相談初期から適切な専門家に橋渡しできる土壌があることは、依頼者にとっての安心と迅速性に直結します。
相続は制度と期限の両輪で動く分野です。
知見が交わる場を活用し、ケースに応じて最適なチームを組むことが、ご家族のこれからを守る最短距離だ――私はそう考えています。














