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【vol.79】『清算型遺贈の遺言執行者、死後事務の受任者となる時の注意点』

広島市安佐北区で司法書士行政書士菅井事務所を開業している、菅井之央(すがいゆきお)と申します。よろしくお願いします。
安佐北区で相続の相談と言えば「菅井」と一番に思ってもらえるような事務所を目指しています。

被相続人 A
相続人 B(Aの兄弟姉妹)
受遺者 B
遺言執行者 菅井之央
死後事務委任契約受任者 菅井之央
相続財産 自宅不動産2000万円、預貯金2000万円、生命保険500万円(受取人指定あり)

この事例は、『家族を「争族」から守った遺言書30文例Part2』という書籍に掲載されている事例の帰結です。
前記書籍の概要を簡単に説明すると、Aとは以前Aの父親の相続手続きをさせていただいて、面識がありました。
ある日Aから電話があり、「余命わずかなので自分の死後のもろもろのことについて相談したい」と言ってAが相談に来ました。そしてAからの依頼で私が死後事務委任契約の受任者、遺言の遺言執行者になりました。
Bが遠方に住んでおり、他に頼りにできる親族もいないとのことだったので、私がすべて引き受けました。
遺言書の中身は、簡単に言うと「Bに全財産を相続させる。不動産は換価換金処分して、売却代金から諸費用を引いて残った財産をBに相続させる。遺言執行者は菅井之央」というような内容です。ここまでは前記書籍に載っています。

上記の遺言書、死後事務委任契約書を作成してから約半年後Aは亡くなりました。遺言書を作成した時は元気でしたが、日に日に弱っていく姿を私は見ており、何とも言えない気持ちになったのを鮮明に覚えています。
Aの死後、私が遺体の引き取り、火葬等に立ち会いました。火葬場にはBにも来てもらいました。その数日後、私が住職と日程調整をして、納骨にも立ち会わせていただき、そして納骨の時の写真をBに送らせていただきました。
この間に死後事務、遺言執行を並行して行い、最終的には不動産も無事売却でき、相続財産をすべてBに引き渡すことができました。すべて終わるのに約1年程かかりました。

ここで死後事務、遺言執行者となるときの注意点、苦労した点をいくつか記載したいと思います。

死後事務で葬儀や納骨を行うとかなりの費用がかかるので、あらかじめ費用の一部を預かっておいた方が急な出費に備えられます。その際はもちろん預り証は必要になります。

②死後事務を受任するときにあらかじめ葬儀屋さんを選んでおいた方がいいと思います。今回は相続人がBのみでしたが、葬儀屋の選定で相続人間でもめることも想定されるからです。「質素にやりたい」「お金をかけて豪華にやりたい」など、宗教の違いなども含めて、委任者が生存中は委任者の意向をよく聞けるからです。

③死後事務の受任者の権限か遺言執行者の権限かがわかりづらい部分があるので、受任者と遺言執行者を分けない方がいいと考えます。同じ人がなった方がいいということです。特に債務の弁済部分で困る時があります。個人に返済したり、病院に返済したり、電気代を支払ったりといろいろあるのですが、支払う相手は死後事務の受任者、遺言執行者などの知識はなく、説明するのが困難な時があるためです。

④亡くなった方の自宅に誰も住んでいない場合は、亡くなった方の郵便物を定期的に見に行く必要があります。支払いがないか、重要な書類が届いていないかなどの確認のためです。この作業が結構大変でした。幸いにも今回は私の事務所の近くだったので、何回も見に行くことができましたが、1ヵ月もすれば、郵便ポストはいっぱいになってしまうのです。

⑤清算型遺贈にした時に、売れそうな不動産かどうかをきちんと調べておきましょう。仮に売れそうもない田舎の土地や山、畑などを清算型遺贈にしてしまうと遺言執行者の業務がいつまで経っても終わらなくなってしまいます。今回の件では、私が遺言執行者を引き受けるときに、自分の感覚の中で売れないことはないと思っていたので清算型遺贈の遺言執行者まで引き受けました。しかし、Aが亡くなった後に気付いたのですが、広島県の土砂災害特別警戒区域に指定されていた場所でした。幸いにも買主が見つかったのですが思わぬところがこの区域に指定されていたので、売却できるかどうかドキドキしながら遺言執行の業務に当たっていました。

細かいことをあげていくともっと出てきそうですが、特に注意した点や苦労した点は以上です。業務上とは言え、A、Bのご家庭にとって非常に大切な部分に携わらせていただき、貴重な経験ができました。相続診断士として少しでも誰かの役に立てる業務ができたと思っています。

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