【vol.50】相続Q&A~障害がある方の遺言書作成の可否及びその方が相続人となった場合~
質問
子どものいない50歳代のご夫婦について、数年前に病気でご主人が倒れ障害が残りました。
障害者の方が遺言書を書く場合、遺言は有効でしょうか?
一方で、その障害者の方が相続人となった場合、後見人等が必要になるので
しょうか?
回答
障害者の方でも、それが何の障害かにより遺言書を作成できるか変わってきます。
身体障害であれば、頭ははっきりしていますので意思能力に問題はなく、遺言書の作成は可能です。
この場合、署名等の自書が難しいようであれば、公正証書遺言で作成することになります。
一方、精神障害の場合には意思能力があるのか見極める必要があります。
実務的には、客観的な判断ができるものとして医師の診断書を用いることがあります。
ただし、医師の診断書があるからといって完全な意思能力のもと遺言書が作成されたことを保証するものではありませんので総合的な判断をする必要があるでしょう。
障害者の方が相続人となった場合も同様です。
精神障害により意思能力が不十分と判断される場合、法定後見制度を利用し、その方の後見人等を家庭裁判所で選任してもらい、後見人等が障害者の方に代わって相続手続を進めることになります。
教訓
障害があるからといって、直ちに遺言書の作成ができなかったり、遺産分割協議に参加できなかったりするわけではありませんが、実務的なハードルは高くなってしまうことが多いです。
先日、相続人の中に後見人が選任されている方の相続手続をしましたが、遺産分割協議書案(その相続人については法定相続分以上をキープ)を後見人に提示し、後見人から管轄家庭裁判所に内容の確認をした後、後見人に遺産分割協議書に捺印をもらい、後見人の後見登記記録と印鑑証明書と一緒に送り返してもらいました。
このケースは、すでに後見人が選任されていましたが、通常は後見人の選任申立ての手続きも行うことになります。
相続開始による諸手続きや遺産の分割手続きでさえとても大変な上に、後見関連の手続きを行うとなると相続人にとってはかなりの負担となります。
障害者がいる相続のケースでも、事前の準備はとても大切になってきます。