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【vol.9】相続Q&A~夫の連れ子に遺産を渡したくない~

Xには,前夫との間に,子Aと子Bが,現在の夫Yとの間に子Cがいます。また,Yは前妻との間に子Dがいます。Xは会社を経営しており,その後継ぎとして,Aを考えています。
Xは,極力Dに遺産を渡したくないと考えています。
【1】Dには,遺留分だけ払えばよいのでしょうか。
【2】Dが納得してくれない場合はどうすればよいのでしょうか。
【3】遺留分より上乗せして払って解決した事例はありますか。
【4】Aの遺留分が1,000万円だとした場合,死亡保険金4,000万円の受取人にAがなっていたときに,1,000万円の遺留分を受け取れなくなるという可能性はありますか。

回答

【1】【2】DはXの相続人ではないため,遺留分もありません。
【3】はい。あらかじめ,遺留分相当もしくはそれ以上の財産を渡すことで,その相続人に遺留分の放棄してもらうことは可能です。
【4】原則,ありません。

解説

【1】【2】まずは,事例の整理を行いましょう。
Xの相続人は,Y,A,B,Cです。
Yの相続人は,X,C,Dです。
したがって,Xの遺産をDが直接相続することはありません。
もし,XがYの遺産をDに極力渡したくない,とお考えの場合,それは,Yが考えることであり,Xの意向をYに押し付けることは好ましくありません。
仮に,Xが死亡して,YがXの遺産を相続した後に,Yが死亡した場合に,Xの財産がDに移転する可能性がありますが,その場合の対応は大きく分けて2通りです。
(1)あらかじめ,YにXの遺産を相続させない,(2)YにXの遺産を相続させる場合,その遺産をどのようにするかはYの意思によるため,原則Xの意思は及ばない。

【3】遺留分の放棄は,家庭裁判所の許可が必要ですが,あらかじめ,遺留分相当額以上の財産を渡したため,という理由であれば,家庭裁判所の許可も取得しやすいでしょう。この場合には,遺言を書いておかないと意味がありませんので,併せて,覚えておいてください。
以前に,1次相続の際に,多めに遺産を相続した者が,家庭裁判所の許可を得て,2次相続の遺留分の放棄をし,2次相続の被相続人が遺言書を書いた,という事例がございます。これにより,2次相続の際に遺言書通りに遺産の分配が行われました。

【4】死亡保険金として遺留分よりも大きい4,000万円をAが受け取った場合でも,生命保険金は受取人であるAの固有財産であるため,原則Aの遺留分に影響はありません。したがって,Aは1,000万円の遺留分を有します。
例外として,被相続人の財産が死亡保険金の4,000万円しかないような場合,Aは他の相続人から遺留分の主張をされる可能性があります。

教訓

本事例のように,当事者ではない方が,被相続人の財産を気にして,相談されるケースは,少なくありません。
本事例では,Xが,Yの資産とYの相続人について気にして,相談されています。このこと自体は,生前の相続対策に関心があって喜ばしいことなのですが,当時者であるYがどう考えているかがわからなければ,アドバイスのしようがありませんし,法律関係をより複雑にしかねません。
Xから相談を受けた相続診断士は,争族の可能性がある旨をXに説明した上で,XとYと相続診断士の3者,場合によっては,弁護士,税理士,司法書士,行政書士等の専門家を交えた4者で話し合いを行い,Yがどう考えているのか,どう遺産を分けたいのかをヒアリングするようにご案内しています。
話を聞くべき人は誰なのか,時にそれは直接の相談者ではないかもしれないことがある点にご留意ください。

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