相続診断協会は、相続診断士の認定発行・教育・サポートを行っている機関です。

相続診断協会相続診断協会
0366619593

【vol.8】相続Q&A~信託を利用する~

Aは先祖代々の土地とその上に建てられた賃貸用のアパートを所有しています。 Aとその妻Xには子供はおらず、Aの法定相続人は妻Xと弟Bです。 Aは、自分が亡くなった後、妻Xが経済的に困らないよう、これらの不動産も含めて、自分の財産のすべてを妻Xに渡したいと考えているのですが、将来妻Xが亡くなった後は、これらの財産は、妻Xが遺言書を書かない限り、妻Xの法定相続人である妻Xの親族の手に渡ってしまうことになります。 なんとか、先祖代々の土地だけでも、将来、Aの親族に承継させる方法はありませんか?

回答

Aは、公正証書遺言により、弟Bを受託者、妻Xを受益者として、当該不動産について信託を設定します。こうすることにより、Aの死亡後は、当該不動産から生ずる収益は、妻Xのものとなります。そして、妻Xの死亡を信託終了事由として定め、残余財産の帰属先を弟B(または甥Z)に指定することにより、当該不動産の流出を防ぎます。

解説

通常、妻Xから弟B(または甥Z)に財産を承継させるためには、妻Xがその旨を記載した遺言書を作成する必要があります。しかし、それは妻Xの判断によるものですから、弟B(または甥Z)が妻Xから必ず財産を承継できる保証はありません。
本ケースのような子供のいない夫婦の相続においては、一度、配偶者の手に渡ってしまった財産は、二次相続の結果、配偶者の親族の手に渡ってしまうことになります。遺言書でも、二次相続以降の財産の承継者を指定することはできません。
このような場合に、家族信託(民事信託)を利用することで、Aの遺志に沿った財産の承継が可能となるのです。ただし、妻Xの死亡時に弟B(または甥Z)に財産が移転する際には、妻Xの法定相続人に対する遺留分にも留意する必要があります。

教訓

信託を利用することにより、二次相続以降も、委託者(本ケースではA)の遺志を反映させることはできましたが、その一方で、委託者の遺志がいつまでも残ってしまうのも考えものかもしれません。受益者の中には、委託者が決めた制約によって、財産を自由に処分・運用することができないことに、不満を感じる者もいるかもしれません。信託を利用した財産承継を行う場合には、委託者の遺志がエゴにならないよう注意も必要です。

PAGE TOP