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【vol.28】相続Q&A~不意打ち!?相続税の連帯納付義務とは?~

質問

相続人に相続税を納めない者がいると、他の相続人が、その分の相続税も肩代わりしないといけないという制度があると聞きました。制度の内容と、その回避方法を教えてください。

 

 

回答

相続税法第34条では
同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者は、その相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税について、その相続又は遺贈により受けた利益の金額を限度として、互いに連帯納付の責めに任ずる。
と規定されています。

これを「連帯納付義務」と言い、ご自身の分の相続税を納付していても、他の相続人が納付をしないと、別の相続人の分の相続税まで納付しなければならないという厄介な制度です。
もらった相続税の本税は相続財産の価額を限度とされてはいるものの、未納期間の延滞税も支払わなければならず、支払方法も延納や物納といった制度はなく、金銭一括納付のみとされています。そのため、ご自身の分の納税を済ませ、残った財産も既に費消してしまっている場合には、連帯納付分の金銭一括納付ができず、最悪の場合、財産の差し押さえなんてことも考えられます。

そもそも、相続で財産を取得しているのにもかかわらず、なぜ相続税を納めることができないような状況になってしまうのでしょう?
一般に考えられるケースとしては、もともと多額の借金を抱えている場合です。相続により取得した財産を早々にご自身の返済原資に充ててしまったために、納税の余裕がなくなってしまったのです。借金以外にも、相続により取得した財産を道楽で使ってしまい、肝心な相続税の納付が二の次になってしまうという残念なケースもあります。このほかに、相続財産が不動産や未上場株式といった換金性の低いものであるが故に、自己資金での納付を余儀なくされるも、手元にそれだけの資金がないために相続税の納付ができないといったケースも少なくありません。

納税者にとっては「不意打ち」とも言える連帯納付義務ですが、平成24年度税制改正により、平成24年4月1日以降に納期限の到来する相続税については、以下に掲げる場合に該当する場合には、連帯納付義務が解除されることとなりました。

⑴申告期限から5年を経過し、かつ、税務署より連帯納付責任の履行を求める通知書が発せられていない場合
⑵本来の納税義務者が延納の許可を受けている場合
⑶本来の納税義務者が物納の許可を受けている場合

他の相続人の肩代わりをして相続税を納めた場合には、本来の納税者である他の相続人に対して「立替払いした相続税を返して」と言うことはできます。これを求償権と言いますが、税金が払えない状況の者に請求したところで、実際お金が返ってくる可能性は限りなく低いでしょう。
連帯納付義務を回避する方法としては、まず遺産分割の段階で、各々の相続人に納税額相当の金銭があることを確認します。このとき、納税額相当の金銭を用意できていない相続人がいる場合には、遺産分割における財産の配分を調整しましょう。そして、相続人全員が申告期限までに納税を済ませること相続人同士で監視し合いましょう。

 

 

教訓

 財産を後世に残す者が行うべき相続対策とは、相続人同士で揉めないよう想いを残しながら財産の行先を決めることはもちろんのこと、残された相続人が相続税の納付に苦慮しないよう納税資金をしっかりと確保することまで行うべきです。相続人全員が相続税を納付するまでが「相続」なのです。

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