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【vol.13】相続Q&A~遺産分割協議のやり直しはできますか~

 被相続人Xは地元でも有名な地主です。相続人は、子であるABCの3名です。
被相続人は生前、公正証書遺言を作成していました。その遺言書の作成経緯は、相続人の一人であるBが会社を経営している関係でその会社の顧問税理士Sがアドバイスをしており、Sが当該公正証書遺言の証人になっており、かつ、遺言執行者に就任していました。

それにもかかわらず、Sが遺言書の存在を開示したのは、相続税の申告期限の一か月前でした。AやCは、BやSに「相続税の申告期限まで時間がないから、この遺産分割協議書に実印を押してくれ。」と急かされ、言われるがままに実印を押捺してしまいした。
よくよく内容をみると、Bにとても有利な協議書になっており、Aは遺産分割協議をやり直したいと考えています。可能でしょうか。

回答

遺産分割協議のやり直し(合意解除)は、可能です。

共同相続人は、すでに成立している遺産分割協議につき、その全部又は一部を全員の合意により解除した上、改めて分割協議を成立させることができます(最高裁判所判例平成2年9月27日)。

ただし、その条件は相続人全員の同意となっていますので、Bの同意が得られなければ、遺産分割協議のやり直しは実現できません。

教訓

遺産分割協議書に判をついてしまうと、現実問題として、協議のやり直しは難しいため、十分に協議の内容を理解した上で、判を押すようにしてください。

本事例のように、専門家が一部の相続人に肩入れすることにより、争族となってしまうケースは実は少なくありません。一部の税理士ではありますが、相続税の申告期限ぎりぎりを狙って、顧客である相続人に有利な分割協議書を提案し、一気に相続手続を進めてしまう事例もございます。

専門家である士業は、相続の登場人物が全員笑顔となるような相続を提案・実現すべきですが、そうではない現実があるのもまた事実でしょう。

 なお、本事例は、Aからのご相談であったため、Aの視点から税理士SやBが悪者に感じられますが、実はAやCの素行が悪く、税理士Sの見事な手腕で地主の複雑な相続がきれいにまとまった、と言えるのかもしれません。

 相続は、それぞれの言い分にそれなりの正当性があり、どの視点から見るかで、がらりと表情を変えるものでもありますので、慎重さをもって対応することが望ましいでしょう。

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