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【vol.12】相続Q&A~保険契約者が死亡した場合の生命保険契約の取扱い~

父は、経営する会社の運転資金とするために、個人でも多額の融資を受けておりました。
そんな父がこのたび亡くなりました。

相続人である子が父の相続財産の計算をしたところ、総負債が総資産を上回る状況でしたので、
子は父の相続を放棄することに決めました。
子が家庭裁判所に相続放棄の手続をしようとしたところ、直前になって、父が契約者である以下の保険契約があることが判明しました。

 

<保険契約の内容>
契約者:父
保険料負担者:父
被保険者:子
受取人:父

 

上記の保険契約を以下のように変更して、保険契約を引き継ぐことはできますか?

 

<変更内容>
契約者:子に変更
保険料負担者:子に変更
被保険者:子のまま
受取人:妻に変更

回答

本事例において、生命保険契約に関する権利は、被相続人である父の「本来の相続財産」に該当するため、子が父の相続を放棄した場合には、当該権利を承継することはできません。

解説

保険事故が発生した生命保険金は受取人固有の財産のため、相続財産には含まれず、受取人が相続放棄をしても、保険金を受け取ることができます。
本事例のように、保険事故発生前に保険料負担者が亡くなった場合には、その生命保険契約に関する権利の取扱いは、以下のようになります。

1.「契約者=保険料負担者=被相続人」の場合
被相続人が生命保険契約の契約者であるときは、生命保険契約に関する権利は、被相続人の「本来の相続財産」となります。したがって、他の相続財産と同様に、遺産分割協議によって相続人の中から新たな契約者を決め、承継することになります。

2.「契約者≠保険料負担者=被相続人」の場合
被相続人以外の者が生命保険契約の契約者であるときは、生命保険契約に関する権利は、被相続人の「本来の相続財産」とはなりません。
しかし、被相続人によって既に払い込まれた保険料があり、契約者は保険契約の全部または一部を解約して解約返戻金を受け取ることもできるため、「みなし相続財産」として、相続税の課税対象となります。

本事例は1のパターンに該当しますので、子が父の相続を放棄した場合には、父が抱えていた負債と共に、生命保険契約に関する権利も放棄することになります。

教訓

本事例では、生前に契約者を父から子へ変更していれば、当該権利は父の「本来の相続財産」に該当せず、相続放棄をしても、当該権利を承継することはできました。
ただし、本事例のように父に多額の負債があり、当初より相続放棄を予定していた場合には、契約者変更の行為自体が、債権者に対する詐害行為とも取られかねませんので、実際の手続にあたっては専門家に相談の上、慎重に行う必要があります。
なお、生前の個人間における契約者変更においては、変更時点で、贈与税の課税を受けることはありません。実際に課税されるのは実際にお金を受け取るとき、つまり、契約者や保険金受取人が解約払戻金や保険金を受け取るときです。

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