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【vol.11】相続Q&A~働かない長男が父の財産をあてにしており心配~

父(82歳)と亡き母の間には,長女の私(相談者;49歳)と長男(52歳)がいます。父は,都内の一軒家(7,000万円相当)に住んでいます。私は結婚して九州に住んでいます。長男は結婚して子がいるにもかかわらず,27年前から仕事をしておらず,父所有のマンション(3,000万円相当)に家族で住み,さらに毎月15万円の生活費を父から受け取っています。
どうやら,長男は,父所有の長男家族居住のマンションを売却して,長男家族は父の住む都内の一軒家に引っ越す計画を立てているようです。このままでは,父の年金や老後の生活費,老人ホームの入居費等を長男家族が食い潰す可能性があります。私は遠く離れた九州に住んでいるため監視することができません。何か良い方法はありますか。

回答

父に意思能力がしっかりある場合には,任意後見制度の利用をお勧めします。
父が軽い認知症等により意思能力が不十分である場合には,法定後見制度の利用を検討すべきです。

解説

任意後見制度とは,本人自身が将来判断能力が十分でなくなった場合に備え,本人自身(委任者)があらかじめ契約(任意後見契約)によって後見人(任意後見人)を選任しておく制度です。任意後見契約は,必ず公正証書によって行わなければならず,任意後見人は,任意後見契約に定められた法律行為について代理権を行使することができますが,法定後見人と異なり,同意権,取消権はありません。
父に意思能力がしっかりある場合には,その自由な意思に基づいて長男にある程度の財産を渡すことは誰も制限することはできません。しかし,任意後見契約において,財産管理や不動産の処分について定めておけば,父の意思能力が不十分となった場合,任意後見人が任意後見監督人の同意を得て,それらの行為を代理することになります。それにより,父の財産を長男が好き勝手に処分することはできなくなります。 
一方,法定後見制度とは,認知証,知的障害,精神障害などによって物事の判断能力が十分でない方について,家庭裁判所の関与により本人の権利を守る援助者(法定後見人)を選ぶことで,本人を法律的に支援する制度です。法定後見人は,本人の判断能力により,「後見」,「保佐」,「補助」の3類型に区分されます。
 法定後見人には,財産管理権があるため,法定後見人の就任時より,父の財産を長男が好き勝手に処分することはできなくなります。

 

教訓

本事例は,父にもの忘れ等の記憶障害がみられるため,おそらく法定後見制度の利用対象者と思われます。父の意思(判断)能力の不十分に乗じて,長男家族が好き勝手に父の財産を浪費し,父の老後の資金が底をつくこと,更には長女が老後の資金を負担しなければならない事態が生じないかまで,相談者の長女は心配されていました。しかし,遠方に住んでいるため,どうすることもできずに途方にくれていたところ,相続診断士に出会い,本件相談に至りました。
本事例は,直接,相続問題とは関係ないように思われますが,相続財産を浪費する相続人がいる事例であり,後に争いとなる可能性が非常に高く,笑顔相続の実現は困難となります。こういった場合には,後見制度を利用することを検討してください。そうすることで,本人の財産を守り,本人の豊かな老後の実現を目指し,本人はもちろん,その相続人も安心してその老後を見守れるはずです。本事例の長男は成年後見制度の利用に反対をしたり,成年後見人に対して嫌がらせ等を行う可能性があります(実際に多いです)。本事例は,家庭裁判所や専門職後見人(司法書士,社会福祉士,弁護士等)と相談しながら進めることになるでしょう。

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